「貯蓄は多ければ多いほうが、幸福度が高いのでは?」と考える人も多いのではないでしょうか。ところが、そうとも限らないようです。ある女性は、貯蓄が2200万円で人生幸福度が50点、もう一方の女性は、貯蓄が400万円で人生幸福度が90点。そして、金額と点数に差がありますが、二人にはある共通点がありました。

2人の共通点とは? 画像はイメージ (C)PIXTA
2人の共通点とは? 画像はイメージ (C)PIXTA

 今回ご登場いただくのはお二人。どちらも一人暮らしで、Mさんは貯蓄総額が2200万円・人生幸福度が50点、Tさんは貯蓄総額が400万円・人生幸福度が90点。考え方や背景をじっくり伺いながら、貯蓄と幸福度の関係について探ってみました。

貯蓄総額が2200万円で、人生幸福度が50点のMさん

Mさん(32歳) 独身、一人暮らし
仕事:IT関連・企画
手取り年収:500万円
資産総額:2200万円
人生幸福度:50点

 現在2200万円の貯蓄があるMさん(32歳)は、新卒時は貯蓄が0円だったそう。

 「学生時代に一人暮らしをしていて、結構ギリギリな生活でした(笑)。働き始めてからは奨学金返済があり、新入社員時代はお金を切り詰めて奨学金の繰り上げ返済に回し、1円でも多く返済し貯金をしようとがむしゃらでした。でも、そのおかげで5年ほどで奨学金は完済。奨学金返済がなくなったのでお金にゆとりはできましたが、出費を増やすことなく、低い生活コストのままでいこうと思い、極端なぜいたくをしないように気を付けました」(Mさん)

 当初は毎日家計簿を付けていましたが、面倒になりやめてしまったMさん。今はエクセル管理に変更し、費目ごとに予算をざっくり設定。1カ月で集計して予算内に収まればグリーン、予算オ-バーならレッド、中間ならイエローと色分けをして、イエローとレッドの場合は、振り返りをして翌月に改善するようにしていきました。すると、みるみる貯まるようになったのです。「家計簿を付けるだけでは効果があまりなく、振り返りをすることが大事だと痛感しました」(Mさん)

 でも、ふと振り返ってみたら「楽しい」と感じる思い出がなかったとMさんは話します。「奨学金を返済していた頃は、お金を貯めるために、我慢して、耐えて、つらい思いをして……そんな思い出ばかり」。Mさんは、せっかく頑張って奨学金を完済したんだから、もっと自分を楽しませてあげたいと思い、大好きな舞台観賞やスイーツ代だけは惜しまないようにしました。

 「舞台は、多い時は月に5回行くこともあって、演目次第では地方公演に行くこともあります。非日常をナマで3時間程度味わえるというのは、何物にも代え難い経験ですね。

 また、スイーツも大好きで、カフェ巡りをしています。カフェのおしゃれな内装やサーブをしてもらう雰囲気というのは一人暮らしでは味わえませんから(笑)。友人と夜に飲みにいくよりも、休日のアフターヌーンティーや平日夜のスイーツビュッフェを堪能しています。飲み会の費用をスイーツ代に回していると考えると、満足度は高いのに安上がりです」(Mさん)

 すると、日々の満足度が高まり、貯蓄も楽しくできるようになったそうです。

貯蓄が500万円を超えて、ふと気づいた

 そうして、資産が2200万円に到達したMさん。既に投資もスタートしていて、投資信託が1200万円程度、預貯金が1000万円程度だそう。ところが、合計2200万円もの資産自体は、人生の幸福には直結していないと断言します。

 「貯蓄が、ある程度まとまった額の500万円くらいになったときに、『貯蓄額と幸福は比例しない』と気付きました。いくら貯めても心配が減るわけではなかったんですよね」とMさん。

 現在の人生幸福度は、まだ50点だというMさん。「貯蓄があるからといって、心の平穏が保たれているわけではありません。これから収入をもっと増やして自分ができる範囲で将来に備えていきたいし、また、貯め込む一方ではなく生活をもっと楽しんでいきたい。貯蓄は単に持っているだけでは価値はなく、何かに使って初めて効果が発揮できると思います。生きているうちに使って、お金の価値を感じていきたいです」

 自分は何にお金を使うと幸福を感じるのかを、しっかり分かっているMさん。今はまだ50点ですが、「これから収入口を増やして、そのお金は人生を楽しむために使っていきたい」とのこと。残りの50点は「伸びしろ」だと話してくれました。