忍耐と努力の人、ジャイ子

 実は原作を注意深く読み進めていっても、ジャイ子がものすごく性格が悪いとか、のび太にひどい意地悪を働くといった描写は、ほとんどありません。

 ジャイ子は連載初期に少しだけのび太をからかうこともありましたが、それをいったら、しずかがのび太を小馬鹿にしたり、仲間はずれに加担したりする回数のほうがずっと多いのです。ジャイ子は容姿がジャイアン似でちょっとだけガサツ、というだけでここまで非人間的な扱いを受け、いわれなき中傷を被っています。なんという損な役回りでしょうか。

 しかしジャイ子が偉いのは、そこで腐らなかったことでしょう。自分は(しずかのように)容姿や愛想で勝負する人間じゃないと気付き、一生を賭けられる仕事として、マンガ家を志します。そして夢の実現のために自己研さんを重ねました。

 ジャイ子は小学生にもかかわらず、作品を他人の評価にさらすことを恐れません。原稿を町内の子どもたちに読ませて感想を聞き、井の中の蛙にならないよう、マンガ誌の新人賞に投稿して実力が通用するどうかを試します。あるときなど、新作を1冊500円の同人誌として自費出版し、ダイレクトに作品の市場性を問いました。