のび太の心の支えとして生きていく

 なんだか、しずかがとても打算的な女性に見えますが、それはそれで一つの賢いサバイブ術です。しずかは、自分がジャイ子のようにマンガ家として一芸に秀でているわけでも、ドラミのように超優等生でもないという自覚があります。己を知っている、という意味では賢い女性です。

 そして冷静に自分の強みを考えた結果、「パートナーに『君がいないとダメだ』と思わせる能力がある」という結論にたどり着きました。

 実際、しずかはのび太の心の支えです。のび太が学校で「ろくな大人になれない」とこっぴどく叱られ、未来に絶望して落ち込んだときなど、のび太は「あの子(しずか)がいるからぼくは生きていけるんだよ」とまで口にしました。一人の男性にここまで言わせる女性が、世にどれほどいるでしょうか。

 突出した一芸や頭脳がなくても(世の大半の人間は、そうです)、自分を必要としてくれる人がたった一人でもいれば、いい。大切なのは、不特定多数からのニーズ(≒モテ)ではなく、たった一つの最適なマッチングなのですから。

 一見して「モテ」そうなしずかが、出木杉を選ぶことなくのび太を選んだのは、示唆に富んでいます。「手の届く最高スペックの相手が最良のパートナーとは限らない」。紙に書いてトイレの壁にでも貼っておきたい金言です。