しずかはなぜ出木杉くんを選ばなかったのか

しずか「のび太さんと結婚するわ」

のび太「あ、あ、ありがとう!!」

しずか「そばについててあげないと、あぶなくて見てられないから」

 しずかのこのセリフを踏まえた上で、光浦靖子さんが藤子・F・不二雄の公式ファンブック「Fライフ」の2号に寄稿した「『ドラえもん』で一番乙女な生きものへ」という文章を引用させてください。光浦さんはしずかのことを「勉強も運動もそこそこできますが、意地悪な言い方をすると、突出した才能がない」と説明しています。これは言い得て妙です。

 確かに原作を読み込んでも、しずかが何かの一芸に秀でているとか、夢に向かってものすごく努力しているとか、得意な科目があるといった描写はありません。バイオリンは下手の横好きですし、ピアノのレッスンはすぐサボりたがります。なに一つ極めていないのです。

 そんな、「そこそこかわいい」「そこそこ優しい」だけで世渡りをする女性が、パートナーから常に「必要」とされ、あがめられるには、どうすればよいでしょうか。正解は、自分が優位に立てるような劣位のパートナーを選ぶことです。ダメ男・のび太を夫にすれば、しずかは一生「姫扱い」です。のび太は一生「自分と結婚してくれありがとう」と言ってくれるでしょう。しずかは、それを分かっていてのび太を選びました。

 もし出木杉と結婚すれば、しずかは優位に立てません。ただでさえ引く手あまたで高スペックな出木杉ですから、しずかは常に自己研さんし、自分を高めていないと、夫が他の女性になびいてしまうからです。