こんにちは。ライターの大宮冬洋です。この連載では、キャリア女子の恋愛ルポを展開しています。僕は今年の冬で40歳になります。年齢を重ねるとせつないことも多いのですが、少しは良いこともありますよね。その一つは、自分と他人の弱さや欠点を許せるようになることです。

 20代の頃の僕は待ち合わせ時間などに異常に神経質でした。基本は5分前集合。5分でも遅れた人には誰であろうが文句をつけ、10分以上遅れたら怒り、15分以上は待たずに帰ってほぼ絶交、という過敏さでした。

 僕自身はいまでも時間や約束を正確に守るほうです。でも、それは自分の数少ない長所に過ぎず、決定的な短所もたくさんあり、しかもその短所はほとんど僕の人格と一致していて、今さら直しにくいことに気づくようになりました。あまり言いたくはありませんが、情に薄いところなどです。これだけで社会生活において致命的な欠点になり得ます。

 それでも僕が何とか生活できているのは、一部の寛容な人たちに許してもらってきたからですよね。とは言え、そうした人たちにそれほど感謝しているわけでもないのですが(このへんが僕の薄情なところです)、「他人の弱い部分を見つけても、できるだけ許容しなくてはいけない。人間関係や社会はそうして成り立っているのだから」と考えられるようにはなりました。大人になるということは、強さや完璧さへの無用な憧れを捨てていくことなのかもしれません。

 いまお話を聞いている鈴木明美さん(仮名、37歳)も、かつては恋人に強さを求めていました(前回記事 37歳・広告ディレクター 夢を諦め東京を去った彼)。明美さんは故郷の九州から遠く離れた東京で一人暮らしをしながら、広告制作会社のディレクターとして働き続けています。徹夜での作業が当たり前の世界なのだそうです。

 一方、九州での予備校時代から付き合っていた同い年の新一さん(仮名)は、東京での生活にさっさと見切りをつけ、公務員になる志も捨て、地元の小さな会社にUターン就職をしました。新一さんには新一さんの悩みや葛藤があったはずですが、20代だった明美さんには東京という戦場から逃げた弱い男として映ったのでしょう。いずれは専業主婦として子育てをする夢を持っていた明美さんは彼に失望し、別れを決意したのでした。