「5年後の自分を想像すると、焦りを感じる」

 このまま出世街道を進みそうな美絵さんには大きな悩みがあります。未婚で、ちゃんとした恋人もいないことです。裕福な実家に暮らしていて男友達も少なくない美絵さん。生活に寂しさや不安を感じているわけではありません。自分自身への規範意識のようなものが「早く結婚して子どもを産まないとダメだ」と訴えかけているようです。

 美絵さんはいま住み働く地方都市圏から出たことはありません。東京や大阪などの大都市に比べると、30歳を過ぎて独身のまま働き続ける女性は少なく、同調圧力も強い土地柄です。豪快に見える美絵さんも独身という形で目立ちたくはないと思っています。

「この年齢で結婚していないことが、いま一番の悩みですね。社内にも独身の女性部長が一人だけいますが、同じようになりたいとは思いません。子どもを産むリミットも迫っていると感じます。子どもが好きとかそういう問題ではありません。とにかく産まないといけない。外見と脳みそがいい男性と結婚して子どもができれば、離婚してシングルマザーになってもいいと思うこともあります。もちろん、性格もいい男性と結婚生活が続けばそれに越したことはありませんけど」

 現状には何の不満もないけれど、5年後の自分を想像すると焦燥感に駆られる――。男性の僕には正直に言ってわかりにくいのですが、精一杯働いているアラフォー独身女性が陥りやすい心境なのかもしれません。

 美絵さんには後悔もあります。学生時代から10年間も付き合ってきて、将来は結婚するものだと思っていた恋人に20代後半で「愛想を尽かされた」経験があるのです。

「思い出の場所でプロポーズをされたとき、私は即答をしませんでした。あなたと結婚したいけれどまだ早い、みたいな返事をした記憶があります。あの頃の私はモテ期だったので、『この人に決めちゃっていいのかな』という迷いがあったのは確かです。独身でいることが仕事でも有利に働いていたので、結婚してオジサンたちとの仕事がやりにくくなったらどうしようという変な心配もしてしまいました」

 いま振り返ると、彼と結ばれるのが一番幸せな道だったと美絵さんは感じています。後悔先に立たず。年上でバツイチの僕は美絵さんに伝えたいと思います。後悔もまた生きる喜びだと。身をよじるような苦い思い出も、やがては人生の彩りになると信じましょうよ。

 ただし、同じ失敗を繰り返してはいけません。ときには反省も必要です。この記事は美絵さんも読んでいます。自分の恋愛を客観的に見直す機会ですよね。何を変えるべきかを一緒に考えませんか。続きはまた来週。

文/大宮冬洋 写真/鈴木愛子

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