自分の思いに素直すぎる彼

 「彫りが深い顔立ちがまず好みでした。仕事をバリバリやっているし、読書などの趣味もすごく合うし、怒ったりしない穏やかな人です。素敵だから既婚なのは仕方がない、と初めの1年は割り切っていましたね。奥さんとはすぐに別居しましたが、『別れなくていいですよ』と私は言っていました。彼との結婚を考えていなかったからです」

 弘子さん、浩一郎さんのことが本当に好きだったんですね……。彼との幸せな日々を他人に否定されたくはありませんよね。いや、何か言われたとしても、弘子さんと浩一郎さんの思い出が消えてしまうことはないでしょう。

 やがて別れが訪れます。きっかけは弘子さんと浩一郎さんが同棲を始めたことでした。

 「同棲をしてからは、自然と結婚の話になりました。最初は彼も乗り気だったんです。でも、すぐに『やっぱり僕は結婚に向いていない。ずっとフラフラしていたい。前の妻とは子どもがいたけれど、本当は子どもも欲しくなかった』と言われてしまいました」

 決定的だったのは、浩一郎さんのさらなる浮気です。あるとき弘子さんは、浩一郎さんに国内旅行に誘われました。しかし、仕事が忙しい時期だったので断ると、浩一郎さんは別の女性と出かけてしまったのです。しかも、その事実を弘子さんに隠そうともせず、「彼女」の写真まで見せてくれました。この人、どんな神経をしているんだろう……。

 結局、浩一郎さんはその女性に押し切られるようにして別居中の妻との離婚届を出し、再婚をしたのでした。中継ぎ投手のような役割になってしまった弘子さんの立場がありませんよね。

 「人の気持ちは変えられないと思っているので、怒りは湧いてきませんでした。むしろ、自分の思いや快楽に素直に従って迷いなく行動できる彼はすごいな、と感心します。自分が関わらなければ、ああいう人が世の中にいてもいいと思います」

 弘子さん、あなたは浩一郎さんにどっぷり関わっています! もう少し現実感を持ちましょうよ。あれ? また説教臭くなってしまいましたね。僕も頭を冷やします。続きはまた来週。

文/大宮冬洋 写真/鈴木愛子

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