自らの方法論でゴールを明確に示し、導く力を身に付ける

サントリーホールディングス執行役員・折井雅子さん
サントリーホールディングス執行役員・折井雅子さん
第一生命ホールディングス執行役員・渡邉寿美恵さん
第一生命ホールディングス執行役員・渡邉寿美恵さん

 第2部はパネルディスカッション。パネリストにサントリーホールディングス執行役員の折井雅子さんと第一生命ホールディングス執行役員の渡邉寿美恵さん、そしてアクセンチュアの堀江さんを迎え、日経BP社執行役員・麓幸子のファシリテーションで「女性役員を登用するために必要な条件とは」をテーマに議論が交わさされた。

 各業界での、「ダイバーシティ経営のトップランナー」で執行役員になった3人のパネリストたち。ディスカッションでは異なるバックグラウンドを持つ3人が、「女性役員を増やすにはどういう取り組みが必要か」「リーダーシップとは何か」という二つのトピックでの議論の様子を紹介する。

 「女性活躍の機運、風土の醸成」「パイプラインの充実」「やってみなはれの精神」――。サントリーホールディングスの折井さんは、女性役員を増やすために必要な取り組みとして、冒頭の3点を挙げた。

 「大前提として、女性の活躍を進めていくという意志を、組織全体で共有することが重要です。また、一度や二度、女性役員が誕生したとしても『それっきり』では意味がありません。女性がキャリアアップし、役員に至る『パイプライン』が必要です。それから多くの企業にとって、女性の登用は前例が極めて少ないので、登用する側もされる側も、確信が持ちにくい。だけど可能性を信じてやってみる、やらせてみる必要があります」(折井さん)

 加えてサントリーでは女性役員が起点となって、「女性マネジャーフォーラム」という自発的なプロジェクトに取り組んでいる。女性の管理職全員を対象に、キャリア意識の向上や、企業の成長に貢献する意欲を促すことが目的だ。

 「後に続く人材をいかに育成して、層を積み上げていくかが重要だと思います」――。

 折井さんの「パイプライン」に近い見解を示したのは、第一生命ホールティングスの渡邉さん。同社では実際に、管理職、部長、役員と各階層別にリーダー育成の研修体系を整備している。各研修での役員・上位層の女性管理職などによる育成関与や多様なロールモデルの存在が、女性社員一人ひとりに適したキャリアアップやモチベーションアップにつながっているという。

 渡邉さんは、実際に全国を飛び回り、ロールモデルとしての現場の女性社員との対話を重ね、日々、女性のキャリアアップ意識の向上に努めているという。

 アクセンチュアの堀江さんは、日本では珍しい、同社の「スポンサー」制度について解説した。スポンサーとは役員などが個別の社員について、育成を管理する役回りだ。例えば「この社員は今の担当分野で一定の成果を挙げたので、新たなチャレンジを与えてみるべきだ」などと組織の中でアピールすることで、キャリアアップを後押しする。堀江さん自身もスポンサーの後押しによってマネジング・ディレクター、執行役員とステップアップしてきたと振り返る。

 「チームが目指すべき『ゴール』を分かりやすく示し、導く力」――。

 表現の仕方はそれぞれ異なるものの、続くトピックの「リーダーシップ」については、3人の意見がピッタリと重なった。ただし『How』、いかに導いていくかという点については、3人の個性が表れる結果となった。

 「時にコンフリクトを恐れず、進化や変革の『糧』にしようという思いで、組織を牽引することを心がけている」(サントリーホールディングス・折井さん)

 「リーダーシップ構築のカギは、信頼の獲得。そのためコミュニケーション、つまり、メンバー一人ひとりとの会話を重視する」(第一生命ホールディングス・渡邉さん)

 「成果を上げるには、全員を目標に集中させることが欠かせない。そのためにはチーム内に『孤独になる人』をつくらないことを強く意識する」(アクセンチュア・堀江さん)

「ダイバーシティ経営のトップランナー企業」で執行役員になった3人のパネリストたちは熱のこもった議論を交わした
「ダイバーシティ経営のトップランナー企業」で執行役員になった3人のパネリストたちは熱のこもった議論を交わした

 「管理職=男性」が当然な時代の中、女性リーダーというチャンスをつかみ取り、試行錯誤しながら結果につなげていった3人の先輩たちの示唆に富む経験談は、後進となる女性たちが思い切った一歩を踏み出すための、力強いエールとなったはずだ。女性活躍推進のムーブメントをさらに広げていくために、「ウーマン・エグゼクティブ・カウンシル」は今後も開催する予定だ。

文/高島三幸 撮影/鈴木愛子