管理職は、やりたいことを実現する側に回れる

はぴきゃり金澤 キャリア形成でよく言われるのが、ピンチがチャンスになるという話ですが、皆さんにそういった経験はありますか。またそれをどう解決されたのでしょうか。

アマゾン永妻 私はいつもピンチだなと思いながら仕事をしています(笑)。以前の部署ではポイント事業の再編を手掛けていたのですが、社内の他の部署との連携を考えたときに、自分たちの部署で計画した通りに物事を進められないことが多々ありました。長期的に見ればそれが正しいのですが、計画に沿って毎日働いてきたチームのメンバーにとってはモチベーションが下がってしまいます。そのときはなるべく透明性を保ち、「なぜ今、変更が必要なのか」をきちんと話して理解してもらうことに時間を費やしました。

アビーム岩井 最近で一番大きなピンチは、今のセクター長に就くことになったときです。前任者が非常に求心力のある男性で、部署内には私よりずっと専門知識を持っている人もいる。マネジメントのさじ加減が分からず、時々はちょっと強がってみたり、うまくいかなかったら今度は下手に出てみたりと試行錯誤が続きました。最近ようやく見えてきたのが、「周りの話をよく聞く調整型のマネジメント」。リーダーシップは一つではないし、私は私なりのやり方でいいと気付きました。

スリーエム広瀬 私は何度か転職していますが、振り返ると管理職として転職したときが一番大変でした。それまでの自分の実績を知らない人たちと、一から人間関係を築いて仕事をしなくてはいけない。そのとき大切にしたのは情報収集です。業界やビジネスを知ることは資料を読めばできますが、組織は人が動かすもの。メンバー全員と一対一の面談をし、いろいろ教えてもらいながら、次に何をしたらいいかを頭で整理していきました。

はぴきゃり金澤 ここから次のテーマへ移りたいと思います。皆さんはリーダーとしてご活躍ですが、最近は管理職になりたくないという女性の声をよく聞きます。そこで、管理職になってよかったことを聞かせていただけますか。

アマゾン永妻 けっこうたくさんあります。まずは重要な意思決定をする一員になれること。決められたことをやるのではなく、やりたいことを決める側になれるのは大きな差です。大変なことはもちろんたくさんありますが、やりたい仕事を実現する上ではいい面がたくさんあります。

アビーム岩井 永妻さんの話と近いですが、一般社員の立場だと、上の人たちにもっとこうしてほしいとか、モヤモヤ悩んだり不安に思ったりすることが多いと思います。私自身もそう感じる場面があったのですが、管理職になって自分が物事を決められる立場になると、そうしたストレスの原因を自分で解決できる。それに管理職になるとたくさん情報が与えられるようになるので、今までは全体が見えていないために不安だったことが、すっと腑(ふ)に落ちるようになりました。

スリーエム広瀬 お二人の話に付け加えると、一つのチームを任されることで、1.5倍、2倍の力が出せるようになるんです。チームの中には自分にない能力を持っている人がいますし、そういう力を集めて大きなことができるのはとても楽しみです。

はぴきゃり金澤 管理職になると、やりたいことができるようになる半面、責任というプレッシャーも生まれると思います。皆さんはその点、どう折り合いをつけているのでしょうか。

アマゾン永妻 問題があったときは、その日のうちになるべく解決するようにしています。どうしても解決しないときはいろんな人に会って話を聞いたりしますし、普段から解決に使えそうな情報の引き出しをなるべく多く持つようにしています。解決法を何案か持っておくことで安心が得られます。

アビーム岩井 管理職になったばかりの頃は、決断することがすごく怖かったです。その中でできることは、判断の軸になるようなインプットを最大限集める努力をすること。自分で調べたり、有識者に聞いたりして集めた材料を見て「普通に考えたらこの結論だろう」と思ったら、怖くても自分で自分の背中を押す。そうやって徐々に慣らしていきました。

スリーエム広瀬 仕事は確率を上げていくことに全力を尽くすことだと思っています。徹底的に情報収集をして、解決策の選択肢をなるべく多く持っておく。あとは一人で抱えないように、上席をはじめいろんな人とリスクのシェアをするようにしています。