知っておきたい、投資理論の三つの基本

 実際に投資を始めるにあたって知っておきたいのは、運用のリスクを抑える三つの手法。

 「一つ目は『資産分散』。ある資産を一点買いするのではなく、複数の資産を組み合わせて購入します。国内・国外の株式と債券という4種類の資産に分散して投資をすることで、値動きのブレを抑えられるというデータがあります。

 次の『長期投資』は、投資する期間を長くすることで、値動きの幅を平準化することです。最後の『時間分散(積立)』は、投資を行うタイミングを分散する投資手法です。たとえば毎月、決まった金額を定期的に購入していくことで、平均購入価格をならすことができます。

 なお、よく聞く『運用のリスク』というのは、資産価値の変動幅のこと。『資産分散』『長期投資』『時間分散(積立)』を利用して、この振れ幅を飼い慣らしていくことが資産運用のポイントです」(高橋さん)

ベストなタイミングを狙わない代わりに、安定した収益を狙う方法がある

 例えば100万円を投資しようという場合、どのタイミングで何を買うかはどうやって決めれば良いのでしょうか? 実は毎日、プロのように株式市場の値動きを見張って決めなければならないわけではありません。むしろ割り切って、多様な資産に定期的に投資していくほうが、長期的に見ると安定した収益率が得られるというシミュレーション結果が報告されています。そういう意味でも、忙しい人には分散投資がオススメなんだそうです。

 ここでは例として、値動きが日経平均株価に連動する、とある投資信託のデータが提示されました。

 「この投資信託に、1996年1月から20年間、毎月1万円積立投資したとします。この期間で日本の株式市場は、1996年1月を超える高値になったことは1度もありません。ところが結果としては、投資した240万円は時価評価額で約359万円に増えています。年間3.8%の収益率です。長期間投資を続けると、平準化により買ったときの金額のほうが低くなるのです。不思議ですが、これこそが『時間分散』の効果です。

 さらに、安定的な収益を上げるために『資産分散』の考え方を組み合わせてみましょう。先ほどと同じように、1996年1月から20年間、世界の主要4資産に投資したとします。すると、このケースでは毎年5.1%で運用していたのと同じ効果が出ています。銀行預金ですと、先進国でこのレベルの金利はありえません」(高橋さん)

 毎月コツコツと積み立てることは、意外にバカにならないもの。そして、国内外の四つの資産を運用することは、単独の資産にお金をつぎ込むよりもメリットがあるんですね。

 「ただ、国内外の株式や債券を自分で個別に組み合わせて買うのは難しい。投資信託はそういう方のための商品です。投資信託は通常1万円から購入できるため投資を始めやすく、またコツコツと長期間、定期的に投資するのに適しています。また、国内外の株式や債券を組み合わせた分散投資ができるという特徴もあります。運用は専門家に任せられるというメリットもあります」(高橋さん)