「営業職はつらい?」―はい、でもそれ以上の魅力が

kay me ファウンダー兼リードデザイナー 毛見純子さん
kay me ファウンダー兼リードデザイナー 毛見純子さん

――営業職の先輩としてお二人にお聞きします。日経WOMANの読者は事務職の方が多く、営業は大変そうというイメージもあります。営業職の魅力は何でしょうか?

毛見 「私が営業職にこだわったのは、仕事のスキルを集約した仕事だと思ったから。お客様に直接会えるのは幸せな仕事ですよね。『ここを改善したら買うのに』といった意見を直接吸い上げられる。当時、マーケティング業務も兼ねていたので、お客様の意見を商品開発部に伝え、実際に会社全体の利益に貢献できた経験があります。

 現場の声が聞けて、仕事上で必要な総合力を養える、これが営業の魅力です」

鈴木 「私も1社目に入社したとき、最前線に立つ営業の最高峰を知りたいという思いがありました。仕事で大切なのは『次に何が起こるのか』『誰がどう思うか』という想像力だと思うのですが、おそらく営業職は最もそれを体験できる職種です。常に社内外の接点となり、双方にバランスの良い状態をつくろうと努める際、『どう動けば社内はうまく回るのか』『どう動けばお客さんにとって良いのか』という想像力をかき立てるのです。

メタップス 経営企画部 広報・コーポレートアライアンス担当 ディレクター 鈴木聡子さん
メタップス 経営企画部 広報・コーポレートアライアンス担当 ディレクター 鈴木聡子さん

 営業職はつらい印象があるかもしれません。確かに、売上達成のプレッシャーがありましたし、それこそ何度も靴のヒールが折れました(笑)。でも、つらいことがあっても、それは自分のために与えられた壁だと思っています」

毛見 「私も、関西で営業職をしていた頃は、県をまたいで片道300キロをライトバンで移動しながら働いていました。夜道を半泣きで運転していたことも。入社して、『この会社は私にとって合っているのか?』と思うことは必ずあると思います。ただ、つらいのを環境のせいにすると、100万個くらい理由はつくれる。だからそれを乗り越えた後、自分がどう変われるかだけを考えると悩まずにいられると思います」

鈴木 「『悩む』のと『考える』のは違うって言葉がありますね」

毛見 「そうですね。『悩む』はムダ。『考える』には意味がある、って教わったことがあります。『悩み』ととらえず、次にどう改善するかを『考える』……」

鈴木 「そうすれば前に進むことになりますね」

――鈴木さんは、営業から広報として転職されるわけですが、業務内容を変える際に何かヒントはありましたか?

鈴木 「きっかけは、自分ではなく他人からもらいました。もともと知人だった現在の会社の代表から『広報に向いている』と声をかけられて。『周りを巻き込む力』『世の中を読み解く力』があると言われました。営業先で訪問した相手の課題を聞くと、自社のサービスだけでなく、それまで回った営業先の役に立ちそうなサービスや人を紹介することもしていました。そういう取り組みが広報に向くと評価されたのかもしれません。

 実は、それまで広報の仕事に関心を持っていませんでした(笑)。営業職は、お客様の意見を聞き、課題を社内に持ち帰り、会社に収益を出す仕事。とても誇りをもっていました。一方、広報は自社の情報を外に出すという点では営業と似ているのですが、収益に直結する仕事ではないと思っていたのです」

悩む前に、誰かに話してみよう

――自分が何に向いているのか、実は身の回りの人や、そばで仕事をしている他人のほうがよく見えていることもあるんですね。

鈴木 「私も20代でこの先のキャリアに悩んでいた時期でした。毛見さんとも共通の、ある知人に相談したところ、“広報のトップ”とも言うべき、サイバーエージェントの上村さんという女性を紹介してもらい、『広報って何?』を聞くことができました。さらに活躍されている広報の方2人ともお会いできました」

毛見 「大きな物事を考えるとき、『3人』というのはキーワードですね。コンサルティング会社の仕事でも大体の場合、知見を持つ方3人に聞けば、進むべき方向性が見えてくるんです。今も何か困ったときは何も考えず、誰かに電話したりメッセージを送ったりします」