パフォーマンス発揮のために、人と自分を比べない

 仕事において良いパフォーマンスを発揮するための基盤としては、仕事に対する自分の姿勢を確認することが大事だそうです。

 「他人と比べるのではなく、自分自身を基準とし、過去と今の自分を比べながら前向きに進めば、健康的なモチベーションを維持できます。自分が成長している、上達していると感じることが大切です」(荒木さん)

 また、モノ・お金・昇進・昇格にコントロールされるのは良くないそう。評価にコントロールされないで、自分自身の中で判断すると、結果的に良いパフォーマンスを発揮できるとのこと。

 次の基盤は、自信があるように振る舞うスキルです。たとえ自信をなくしていても、うつむくのではなく、前を向いて笑顔で過ごすと、良いパフォーマンスにつながります。

 「準備も大切。しっかり準備をすると不安が減ります。ラグビー日本代表はラグビーワールドカップ2015に向けて3年半かけて徹底的に準備し、不安材料をなくしました」(荒木さん)

 例えば、仕事のプレゼンがある場合、内容を吟味し、資料の文字のサイズや色は見やすいか、説明は時間内におさまるか、などの事前準備をします。当日と同じ服装で、同僚を相手に練習するのもいいでしょう。内容、時間、話し方、服装、すべて準備OKであれば、不安はなくなります。

 「緊張するとドキドキしますが、ある程度ドキドキして、不安感があったほうが、物事がうまくいくと言われています。不安があると徹底的に準備しようとするからです。興奮レベルが少し高いほうが良い判断ができることが証明されていて、平常心ではダメなのです。

 五郎丸選手は、どんな状態でもキックが成功するように、ルーティーンを作りました。ルーティーンは日本語に訳すと『準備』のことです。一連の動作に集中することによって不安を取り除き、体の調整をするのです」(荒木さん)

 キックが入らなかったらどうしようとか、過去の失敗を思い出してしまう。それを排除するためのルーティーンだそうです。

 最後に、日本は災害の多い国なので、私たち日本人はそれをうまく乗り越える力を社会的に持ち合わせていると荒木さんは話します。

 「何かを乗り越えるために、人との関係性は重要。難問にぶつかったら家族に話したり、仕事関係以外の人に相談してみましょう。

 私は海に行って知らない人と話すと、落ち込んでいても気分が変わります。仕事と関係ない場に身を置くと、自分の強さが認識でき、会社以外の人と話すと励まされることがあります。そうやって困難を乗り越えながら、チャレンジをしてみてください」

 荒木さんは最後に来場者にエールを送り、話を締めくくりました。

文/芦部洋子 写真/古立康三