起業家の奥田浩美さんが提案する、「会社を辞めないという選択」。会社に所属しているほうが、様々な人とつながりやすく、より大きく社会を変えられる可能性を秘めていると奥田さんは言います。あなたの強みを会社で生かすには? 会社を“使って”自分の夢をかなえるには? 書籍『会社を辞めないという選択―会社員として戦略的に生きていく』の中から、明日からすぐに仕事が好きになれる働き方を提案します。

お年寄りが、地域が、変わり始めている

(C)PIXTA
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 以前の記事「多くの人から知恵を集める裏ワザ 失敗の様子を発信せよ」でお話したように、鹿児島県肝属郡肝付町(きもつきぐんきもつきちょう)にて、IT推進の活動を行っています。そのプロジェクトに協力している私たちにできるのは、新しい仕組みを作り、それを広めることだと思っています。

 この本を書いている間に、ITふれあいカフェで70代後半のおばあちゃんに会いました。

 限界集落に住むこのおばあちゃんのタブレットの使い方は、私たちの想像を越えていて、そこからまた新しい仕組みが見えてきます。おばあちゃんは、タブレットを使って、関東に暮らす難聴のお嬢さんとテレビ通話を行っています。お嬢さんは聴覚障害者で、関東で手話の先生をされています。タブレットが使えるようになってテレビ電話ができるようにならなければ、離れているお嬢さんとコミュニケーションが取れなかったといいます。つまり、タブレットが生活に入ってきたことで、おばあちゃんもお嬢さんも人生がぐっと変わったらしいのです。

 もう一つの使い方は、身体が不自由な同級生の間を写真でつなぐということです。ITふれあいカフェでタブレットを使って写真を上手く撮れるようになったので、タブレットに保存した写真を持って身体が不自由な同級生のところを訪ねているそうです。もう歩けなくなった同級生や、病院に入ってしまった同級生に、その人たちの写真を撮って、別の人のところに様子を伝えに行くそうです。タブレットはカメラでもあり、大きなモニターでもある。70代後半のおばあちゃんが、新しいツールに対して非常に積極的な取り入れ方をしていることもそうですが、現代の課題解決に自然な形で利用していることに驚かされます。