終焉に向かいながら学んでいる人々

 それ以外にも、欲しいものの買い物代行などもタブレットを使って行っているらしいのです。限界集落には買い物をするお店などありません。比較的元気なこのおばあちゃんは、時々お店に行ったときに「○○さんが欲しそうなものだなぁ」と思うと写真を撮ってきてあげるらしいのです。動けない高齢者のための買い物代行、これはまさに全国で自治体やNPOなどが仕組みづくりに取り組んでいますが、このおばあちゃんはすでに自然な形の「助け合い精神」でそれを行っています。

 でも、ITふれあいカフェに来るたびに、申し訳なさそうにこう言うそうです。

 「この場所でわからないことが聞けるのはよかけど、こんなに質問攻めでカフェの人には迷惑じゃないかねぇ。いつも聞いてもらって、時間をとってばかりでごめんねぇ。私が来たら長い対応ばっかりで」

 そして肝付町の人が答えます。

 「みなさんに教えることで私たちこそ学んでいるんですよ」

 確実に、お年寄りが、集落が変わり始めています。肝付町の限界集落において、終焉を見届けるしかないと覚悟を決めながらも、そうやって多くを学んでいるのです。