情報格差が広がりすぎている危機感

 その昔は、電話でもテレビでも自動車でもFAXでも、その時々の最先端技術が社会に投入されれば、世代間や貧富の差によって多少前後するものの、ほぼみんなが同時に使える製品となることが当たり前でした。ところが今のIT製品は、シリコンバレーから東京を含めた世界の大都市へと波及したところで止まってしまって、地方では高齢者どころか30代の若い世代すら使っていない場合が多いのです。

 そういった中でコミュニケーションの断絶が起きてきます。さらにはITの最前線にいる人たちによって、情報はタブレットやスマートフォンにどんどん集約されていく。そのうち、「全部をここで完結させれば便利じゃないか」ということになり、あらゆるコミュニケーションや情報の送受信、取引が、Web上の狭いところに集められて、最先端の製品を使わない人はそれらの社会活動からは隔絶されることになります。こういう現象が進む中で、ここ数年、地方に住む高齢者がどんどん置いていかれているという感じを受けるようになりました。

 基本に立ち戻って考えてみれば、本来、ITとはコミュニケーションを豊かにするために生み出されたはずです。それなのにITの最前線に立つほんの一部の人たちだけで、社会のあり方を全部決めていく世の中になってきている。最先端の輪は狭まっていく一方で、置き去りにされていく人が増えているというのはどういうことだろう。それが許せなくて、もっと多くの人に今起こっている現象を気づかせるためにも、地方から何かを発信することに興味を持ちました。

<次回に続きます>

文/成田真理 写真/PIXTA


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