起業家の奥田浩美さんが提案する、「会社を辞めないという選択」。会社に所属しているほうが、さまざまな人とつながりやすく、より大きく社会を変えられる可能性を秘めていると奥田さんは言います。あなたの強みを会社で生かすには? 会社を“使って”自分の夢をかなえるには? 書籍『会社を辞めないという選択―会社員として戦略的に生きていく』の中から、明日からすぐに仕事が好きになれる働き方を提案します。

誰かが困っていることは、必ずビジネスになる

 ここからは、私がこれまでの人生を通して学びとったことや、現在進行中のビジネスを通して感じていることをお伝えしようと思います。これまで、会社に居ながらにして自分のビジョンを持ち、新しい価値を生み出して社会に影響を与えていくにはどうするかをお話ししてきましたが、ここでは私の事業への取り組みを、一つのケーススタディとして見ていただきたいのです。紹介するのは長年関わってきたイベントプロデュースの事業とは別に立ち上げたばかりの、まだ生まれたての事業です。起業家と会社員、立場は少々異なりますが、基本となる考え方やアプローチに違いはないはずです。そこには必ず、会社員であるあなたの仕事にも役立つことがあるはずですので、「自分の仕事だったらどうか」と置きかえながら読んでいってみてください。

 私は20代の頃から25年間、IT業界のカンファレンスの企画・運営に携わってきましたが、そのビジネスに加えて、2013年7月に、徳島県海部郡美波町に株式会社「たからのやま」というを設立しました。地域の人、特に高齢者のみなさんがスマートフォンやタブレットに気軽に触れられる場となる「ITふれあいカフェ美波」を、同町に2014年5月に開きました。続く同年10月には、鹿児島県肝属郡肝付町(きもつきぐん きもつきまち)に、同様の「ITふれあいカフェ肝付」をオープンさせています。

 実はこの二つの拠点には、共通点があります。町の中に、人口の過半数が65歳以上の高齢者という「限界集落」があるという点。たからのやまは、地方でビジネスを興すために作った会社です。これまでビジネスの足場を都市部に置いてきた私が、なぜ地方のこのような集落に着目したのかということから、お話ししていきたいと思います。

地方の集落に着目したのは、一体なぜ? (C)PIXTA
地方の集落に着目したのは、一体なぜ? (C)PIXTA