シンプルできれいな人生なんてない

 私がみなさんと同じ20~30代ぐらいの時、「今やっている仕事を一生続けて、何かを成し遂げよう」とは思っていませんでした。社会に認められている感覚すら、ほとんどなかったと思います。

 私は、インドの大学院に行って社会福祉を学び、そこからまずITのイベント業界に入りました。はじめは、ITのイベントに自分の学んできたことが生かせるとは全く思っていませんでした。教育と福祉を学んできたので、サービス業が向いているとは思わなかったし、ITの技術も全然分からなかったし、「これが自分の強みだ」なんて思ったこともなかった。

 でも、いつの時代も、そういう人がほとんどではないでしょうか。

 シンプルできれいな人生ってないと思うんですよ。「小学生の時に親が病気になって、それを助けてくれたお医者さんに憧れて、医学部に行って、夢だった医師になりました」とか……そんな夢をもって邁進している人なんて一握りです。

 少なくとも私は、そういうモチベーションがない選択をしてきました。「昔学校の先生に助けてもらったので、教育学部に入りました。先生になって子どもたちを救いたいです」って言えたらいいかもしれないけど、そんなきれいなストーリーじゃないですから。

 こういう話が世の中に全くないとは思わないけれども、私にも、あなたの手のひらの上にも、そんなストーリーが今ないのであれば、このままなくてもいいではありませんか。

 シンプルできれない人生を語る人が目立ったり、メディアに出たりするから、勘違いしちゃいますよね。「何もない私が何もなくふわーっと生きてます」なんて記事は出ないじゃないですか(笑)。日経ウーマンオンラインは、「何も夢がないけど精一杯頑張っていて、でも何になれるか分かりません」っていう人を、一度取り上げてみたらいいかもしれませんよ。