部下は“動かす”ではなく“巻き込む”

 私は、あるプロジェクトを動かすときには、「そこにマッチする人が巻き込める状態」になっていたいと思っています。人を動かそうとか、10人中10人を巻き込みたいと思っているわけではなく、そこにふさわしい人を巻き込みたい。なぜなら、個人の方向性があるなかで、マッチする人だけをプロジェクトごとに切り取ったほうが、早く走れるから。

 それを行うためには、その人のことをよく知って、嗜好や能力を的確に判断しないといけません。これが、「ワーク・ライフ・インテグレーション」を実現するときに大切なことでもあります。その人のバックグラウンドや成し遂げたいことが、仕事のモチベーションと強くつながっていると思うんです。そして誰もが、そういう思いを仕事にすべきだと思っています。

 とは言え、「1万人の会社は、個人の嗜好や能力なんて把握しきれないじゃないか」って思いますか? でも、1万人の会社だって、部署やチームで分かれているので、その中で分かっておくことはできます。

 それから、「会社とプライベートは分けたい」と思う人もいるかもしれません。でも、それは30年前の話。今は、個人の情報が勝手に入ってくる時代です。本人同士がつながっていなくても、例えば「○○さんが会社の新人さんの結婚式に出席しました」とか、自分以外の人が共通の知人の結婚式に呼ばれていることが、誰かのFacebookで分かってしまうわけです。

 昔はSNSがないし、背景も分かりたくない時代。しかし今は、分かりたいかどうかは関係なく、分かってしまう時代。もちろん、プライバシーを守りたいところはあります。でも、どうせ分かってしまうのならば、目をつぶらずに、分かってしまう部分はきちんと把握しつつ、かといって立ち入らない。そんな新しい「人と人との接し方のルール」が大切です。

 そんな時代だからこそ、「ワーク・ライフ・インテグレーション」――背景が分かっている人たち同士でチームを作り、同じ距離感で仕事ができる人と、プライベートでまだらになるような働き方ができると思っています。