39歳で結婚後、不妊治療のために、退職をして専業主婦になった。けれど、やっぱり働きたい。そうして模索した後、高時給の時短勤務という新しい働き方を選び、不妊治療と両立している女性がいます。今回は、41歳のその女性に「本音」を聞きました。

A・Mさん(41歳)
制作会社・営業部
妊活中
専業主婦歴…約2カ月
職歴…新卒で小売業に入社し、経理事務を行う。外資系のコンサル会社に転職し、秘書をした後、外資系制作会社に転職してメディアプランナーやマネジャーを務める。39歳で結婚し、妊活のために退職。現在は、時短勤務にて時給4200円で週4働いている。

――A・Mさんは、ご結婚後、すぐに不妊治療を始めたとお聞きしました。

 「はい、一昨年、39歳で結婚しました。年齢のこともあり、すぐに不妊治療を始めたんです。治療の一環ではりに行った時に、先生から『心身共に疲れていますね。これでは、妊娠する状態からは遠いと思います』と言われて大きなショックを受けました。確かに当時は、外資系制作会社で激務な日々。新規プロジェクトのリーダーをやっていて残業も多く、家に帰って夫が寝た後にPCを開くことも多々ありました。家事も思うようにできず『せっかく結婚したんだから、もう少し家庭でゆとりを持ちたい……』という気持ちが募っていきました」

――不妊治療を始めていかがでしたか。

「思った以上に心身の負担がありました。通院にも時間がかかりますし、待ち時間が非常に長くて。これでは、激務の仕事と両立していくのは無理だと思って、一度仕事を辞めたんです。

不妊治療のために専業主婦にはなったのですが… 画像はイメージ (C)PIXTA
不妊治療のために専業主婦にはなったのですが… 画像はイメージ (C)PIXTA

 専業主婦になり、妊活をしながら、失業保険を受給しようと思っていたのですが……実際にそうなってみると、国民年金や国民健康保険などの支払いがキツかったですね。新卒から39歳までずっと働いてきて、稼いだお金を自由に使ってきたので、『生きているだけでお金がマイナスになっていく』という状況が怖くて怖くて。私の周りには専業主婦の友人がほとんどいなかったこともあり、専業主婦を続けていくイメージが持てず、働きながら妊活と両立できる方法はないかと模索しました」

――それで、「派遣」という働き方を探してみたんですね。

 「はい、正社員はやりがいがありますが、どうしても残業がつきものです。派遣という働き方なら、時間があらかじめ決められているので予定が立てやすいと思ったんです。といっても、派遣の募集を見てみると、時給1300円くらいのテレアポがほとんど。これまでの仕事内容とは全く異なるものばかりで、『もはや、自分のキャリアはなくなったんだ……』とぼうぜんとしました。

 そんな時、『スマートキャリア』という時短勤務の仕事をマッチングしてくれるサービスに出合ったんです。たまたま友人に相談した時、『このサービスで派遣されている時短勤務の人が私の職場にいるよ』と教えてくれて。サイトを見てみると、希望の日数や時間で働くことができ、第一線で活躍できる上、採用者の約半数は時給2200円以上で勤務しているなど、好条件の求人が多いのも魅力でした。

 『これなら!』と、すぐに申し込みました。道が開けたような気持ちになりました」

――就職の面談等では、不妊治療中というお話はされたのでしょうか。

 「いえ、実は面談から採用決定まで、治療の話はしませんでした。正直な話、その話をして採用に至らなかったらイヤだなと思っていたんです。ただ、仲介してくださる担当者には話していました。もし採用になったら、治療ができるようなかたちで勤務日時などを相談したいと思っていました。

 その後、現在働いているスタートアップの制作会社に、採用をいただくことになりました。私のこれまでの経験を考慮いただき、時給は3800円という高時給が提示されて驚きました。職場ではフリーランスの方が多く、『決まった時間にデスクにいてください』という感じが全くありません。自分の裁量でできるので、自宅でもカフェでも休日でも深夜でも『やりやすいように仕事してください』という雰囲気。通院もスムーズにでき、すごく恵まれていますね。

 仕事内容は、正社員の時はクライアントと真正面からぶつかるような仕事をしていたのですが、現在はメインで動いている上司のアシストをするような立ち位置です。上司から大まかな方針をもらい、自分なりの解釈を加え、工夫しながら資料作成を行います。前職の経験がなかったら、全くできなかった仕事だと思います。これまで12年間蓄積してきたスキルでさまざまな角度から考えられる。経験を存分に生かせるのがうれしいですね」