少し余裕が出てきて働こうと思ったのだけど…

――およそ10年間、専業主婦をしてから仕事に復帰されましたが、きっかけはどのようなことだったのですか。

 「子どもが小学校高学年になってきて、私も家事の手の抜きどころが分かってきました。周りのママ友のほとんどがマイホームを持っていたので『わが家もお金をためて、いつかはマイホームを買いたい!』という思いが高まり、私も働きに出て、お金をためようと思ったのです。

 でも、いざ履歴書を出してみたら、運よく面接に進んでも採用には至らず、全滅……。『私なんて、どこも採用してくれるところがないのではないか。一生仕事なんて無理なんじゃないかと悩みました。すべてにおいてネガティブ思考になりましたね」

――専業主婦のブランクは感じましたか。

 「はい、約10年というのは、かなり長いブランクです。新卒の時の就職活動では、問い合わせや履歴書のやり取りは電話や郵送でしたが、今はすべてWEB。WEBでの操作やメールルールに不慣れで、やり取りするのも不安でいっぱい。運よく面接まで進んでも、『こんな私で仕事ができるだろうか』『時代に取り残されているのではないか』と委縮してしまって。緊張感が面接官に伝わってしまい、本来の自分の姿を見せることができず、採用に至らなかったのだと思います」

――その頃、旦那さまがご病気で入院されたとお聞きしました。

 「はい、夫が病気で突然入院することになったんです。最初、私はその事実を受け止められずにいました。まだ就職もできていませんし、子ども二人を抱えてこれからどうしていけばいいのかと……。毎日、精神的、体力的でいっぱいいっぱいでした。そしたらある時、夫が入院している病院の看護師さんがこんなことを言ってくださったんです。

 『10年後、子どもたちはママのところにいないんだよ』、と。

 私が仕事をしないで毎日面会に来ていて、夫や子どものことに必死になっていた姿を見て、恐らく私の将来を心配してくださったんだと思います。その看護師さんは、娘さんが既に独立されたそうで、夜勤もこなされていました。

 私は、『ああ、そうか』と少し目が覚めた気持ちになりました。