専業主婦も一つの選択肢として考えていい

――現在はどのようなお仕事をされていらっしゃいますか。

 日本コカ・コーラで東京2020年オリンピックホスピタリティの責任者として、まずはコカ・コーラ社が過去90年もの間、世界オリンピックのパートナーとして培ってきた経験や知見を学び、会社の事業を理解し、国内外から訪れるお客様にとってどのようなホスピタリティがよいのか企画の準備をしています。私の仕事は、数千を超えるお客様の宿泊や試合のチケット手配、交通手段やその他のエンターテインメントの準備など、さまざまな面でのサポートです。これまで得たコカ・コーラ社の伝統をベースに東京で開催される一大イベントをどのように進化させるか、2020年のオリンピックで終わりではなく、オリンピックから何が始まるかを考えていきたいと思っています。

 今、何よりも、子育ての経験が生きています。子どもを育てるという仕事はうまくいかないことだらけで、試行錯誤の連続。極端な話、会社の仕事なら、うまくいかなければ辞めることもできますが、子育てや家事はやめるわけにはいきません。

 もちろん、「みんな専業主婦になりましょう」と言っているのではありません。「専業主婦が、一つの選択肢としてあってもいいのでは」と伝えたいのです。子どもが小さい時に数年休みたいと考えている人は、堂々と休んでいいと思うんです。仕事に家事に育児に……って、疲れている人もいるのではないでしょうか。全部できる人はスーパーウーマンです(笑)。私のように、それができない人もいる。そういう人は、一度仕事を降りてもいい。仕事の現場から離れている期間の過ごし方次第で、再び仕事で活躍していくことは十分できるはずです。

(後編に続く)

文/西山美紀 写真/鈴木愛子

プロフィール
薄井シンシア
薄井シンシア(うすい・しんしあ)さん
日本コカ・コーラ「東京2020オリンピックホスピタリティ」責任者。1959年、フィリピンの華僑の家に生まれる。東京外国語大学卒業後、日本人と結婚。広告代理店で2年間勤務。外務省勤務の夫と娘と5カ国で20年暮らす。タイで、娘の通う学校の給食のおばちゃんから仕事再開。帰国後、会員制クラブ電話受付アルバイトを経てANAインターコンチネンタルホテル東京では営業開発担当副支配人に。ボランティアとして、ニューヨーク大学プロフェッショナル教育東京のプログラムの企画や運営支援、Warisワークアゲイン戦略顧問を務める。著書は「専業主婦が就職するまでにやっておくべき8つのこと」