「ブランク期間でも、有意義な経験を積むことはいくらでもできます。例えば、子どものPTAや地域の活動、趣味サークルの運営でも構いません。家事や子育てでも家族の介護でもいいのです。人として大切な役割なのですから。

 大切なのは、何事にも真剣に取り組むこと。真剣に取り組んだ人は、その経験を価値ある経験として意味づけ、語ることができるはずです。『PTA役員をやって、仕事の効率化に取り組み、集まる日数を半分にしました』と語ることができれば、PTA経験も一つのキャリアになりますし、その経験はその後の仕事にも活かせる立派なスキルとなります」(しゅふJOB総研川上さん)。

「PTAを毎年やっていました」「地域のボランティアに参加していました」「習い事の発表会のとりまとめをやりました」……そんな活動が評価されます 写真はイメージ(C)PIXTA
「PTAを毎年やっていました」「地域のボランティアに参加していました」「習い事の発表会のとりまとめをやりました」……そんな活動が評価されます 写真はイメージ(C)PIXTA

 また、昔働いていた時の価値観、考え方にとらわれず、今、求められている仕事を一から学ぶ気持ちで、努力できることも、元・専業主婦が再キャリアをスタートさせるうえで大切。

 「今、これまでになかったような職種、仕事が次々と生まれています。以前やっていたからという理由でなんとなく事務職を希望する、というよりも、ITや観光など今後もニーズが高まる業種での復職を目指し、思い切って一から技術を学ぶ、といった選択をする方が、長期的にはステップアップできる可能性が高いです」(Waris小崎さん)。

 「時代の大きな流れとして、『長く働く』ことよりも『成果を出す』ことが評価される方向に向かっていると感じています。より短い時間で成果を出すためには、一人ひとりが自分の個性やスキル、経験を最大限活かせる仕事に就く方がいい。だからこそ、『自分ができること』の範囲を広げ、その価値を高めていくことで社会に貢献する、という姿勢が大切です」(しゅふJOB総研川上さん)。

 働き方の選択肢が広がってきている今、「元専業主婦」という経歴も『自分らしさ』の一つととらえ、自分の価値を高めながらステップアップしていける、そんな時代が始まりつつあるようです。

文/井上佐保子 写真/PIXTA

この人に聞きました
川上敬太郎
川上敬太郎(かわかみ・けいたろう)さん
ビースタイル しゅふJOB総研所長。テンプスタッフ(現パーソルホールディングス)で新規事業責任者などを歴任。転職後は執行役員など管理職として、営業・経営企画・人事といった人材サービス事業のほぼ全てのセクションに携わる。2010年にビースタイル入社。2011年より現職。厚生労働省委託事業検討会委員、男女共同参画センターでの講演など、主婦人材の活躍推進や人材サービス業界のあり方について積極的な意見提言を行う

小崎亜依子
小崎亜依子(こざき・あいこ)さん
Waris ワークアゲイン事業 統括/Waris Innovation Hub プロデューサー。野村アセットマネジメントを経て、留学・出産育児で5年のキャリアブランク後、NPOのアルバイトで復職。2007年より日本総合研究所で企業のESG評価などを担当した後、2015年Warisに参画。キャリアブランクのある女性の再就職支援「Warisワークアゲイン事業」を手掛け、プロフェッショナル女性を対象としたプロジェクト型ワークの創出や多様化推進のためのコンサルティングを行う。著書に『女性が管理職になったら読む本』(翻訳・構成を担当)など