「女子力」という呪縛は、実は自分がしているのかも

 とはいえ、大皿料理などは、誰かが率先しないと回らないこともあります。そこで、取り分けに際しては、このような行動に移してはいかがでしょう。

 例えば、役割を振るという行動。「このサラダは私が取り分けしますけど、あとは皿を順に回すので各自で取ってくださいね」と言ったり、「次は○○さんが取り分ける係ね!」と言ったりすることで対応できるでしょう。宴席の最初に「今日は私も楽しみたいので、何もしませんよ~」と笑顔で宣言したり、「アメリカではバーベキューは男の見せ所だそうですよ。課長の肉さばき見てみたい!」などと言ったりするのもいいかも。

 もし、貴女がやるのであれば「今日は、幹事なのでやりますけど……」と理由があるからやるんだ、と明確にすることが大切。早く食べたいから、進まないからという理由でもよいでしょう。女性だから取り分けるというのはナシにしたほうがいい。そうすれば、仕切りは持ち回りという意識が自然と芽生え、たとえ男性でも必要であれば取り分けや細々とした注文や会計の手配などをするようになるでしょう。

 職場で周りの人たちの「お母さん」になる必要はありません。もし、徹底してお母さん役を買って出る覚悟なら、それこそ見返りを求めちゃダメです。

他の女性を追い込んでしまうこともある

 ここで、もう一つ「おや?」と思ったことがあります。それは普段、いわゆる“女子力を発揮していない女性”を暗に責めることにならないか、ということ。これ、女性が女性に対して行うセクハラのようなものです。

 現在、女性が今の職場には貴女一人のようですが、例えば貴女がいなくなった後に別の女性が入ってきて、その彼女が同じ役割を担わされるのは、果たして良いことでしょうか?

 貴女は自分でよかれと思ってやっていたのでしょうが、次に来る人は「自分のことは自分で」という考え方だったら、どうでしょう? 貴女がお母さん役を買って出ていた状況に慣れていた周囲の男性陣は、「以前は△△さんがやってくれていたのに、今度の××さんは女性なのにやってくれない。気が利かない人だね」と思ってしまうかも。これって、いいことではないですよね。

「女子力」に呪縛されることは不幸……。 (c)PIXTA
「女子力」に呪縛されることは不幸……。 (c)PIXTA

 そして、バレンタインの義理チョコだけで職場のコミュニケーションがうまくいくとは思えません。もちろん会話のきっかけくらいにはなるでしょう。でも、その程度のものがないだけで、コミュニケーション不足になるなら、もっと別のところに原因があるはず。

 きつい言い方になりますが、結局、貴女が配りたいから、そして御礼を言ってもらいたいから配っているだけなのでは? 正直なところ、個人的には日本のチョコレートのバラマキは苦手です。独自の珍妙なホワイトデーというものまで作られたせいで、もらううれしさよりもかえって「面倒だなあ」と思うようになってしまいました。

 さて、いわゆる「女子力」って、男性が発揮してもいい心遣いのこと。相手との距離をはかり、自分が今、何を求められているか、そしてそれが押しつけになっていないかを判断できるか否かということ。つまりは「コミュニケーション力」なんです。きっと頑張り屋さんの相談者さんなのでしょう、ここはもっと力を抜いて気楽に対処してみてください。周りの男性たちは、貴女が思っているほど子どもではないと思いますよ。

文/藤村岳 写真/PIXTA

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