制度の成功を決めるのは「利用率」ではなく…

――これまでになくなった制度もあるということをお聞きしましたが、制度見直しのフローなどはあるのでしょうか?

 厳密なフローはありません。なぜなら、厳密にしてしまうとフレキシブルさが損なわれて、制度の運用自体が面白くなくなってしまうと考えているからです。とりあえずやってみよう、でスタートして、うまくいっていないと思ったらスッパリやめる。そういったトライ&エラーを繰り返しています。

 やめてしまった制度には、「目標達成ドーナツ」というものがありました。会社の月の全体売上目標を達成したときには全社にドーナツを配るという制度だったのですが、その後すぐに月間平均1万歩を目指す「幸せは歩いてこない」制度や健康診断でA判定獲得を目指した「目指せ!A身体」制度など、健康促進制度を導入したので、利益が相反するということに気付いて、廃止にしたんです(笑)。

――利用率が低いから廃止する、という考えではないんですね。

 そうですね。例えば「パートナーシップ制度」は同性婚や事実婚を支援する制度ですが、利用率がぐんと上がるというものではないと思っています。けれど、そういった支援をしっかり行っている会社なんだ、ということが社員に伝わっていることが大切だと思っていますね。

――他の企業がこうした恋愛制度を取り入れる際、どうすれば受け入れられやすいと思いますか?

 制度自体を実施するのは、実は難しくないんです。ポイントは、どうやって受け入れられる「風土」を作っていくかじゃないでしょうか。

 弊社内でも、これはふざけすぎなんじゃないの? と言われることもありましたが、空気を読まずに提案していったことで、徐々に社員も楽んでくれるようになっていきました。アイデアを売り物にする会社なので、元々受け入れられやすいベースはあったのだと思います。

社内にはコーポレートアイコンの目玉焼きをモチーフにしたさまざまなアイテムが
社内にはコーポレートアイコンの目玉焼きをモチーフにしたさまざまなアイテムが

――「32の制度」の中で、現在特に力を入れている制度はありますか?

 女性の多様性のある働き方を応援する「Dear WOMAN」制度というものがありまして、日本企業としてはいち早く卵子凍結から保存までの費用助成をスタートしています。

 「Dear WOMAN」制度では、社内の女性社員に向けて「女性のための医療セミナー」も開催しました。そこでは専門医師を講師にお招きして、女性の体についてのお話や、妊娠・出産、そして婦人科系の病気についてのお話をしていただきました。妊娠の可能性が低下する年齢は何歳頃かなど、働く女性がライフプランやキャリアプランを設計する上で、指標になるような内容で、とても勉強になった会でした。

 そのセミナーの反響として、社長はじめ多くの女性社員からは、「働く女性たちがライフステージの変化によってどういった不安を抱えていくのか、男性の管理職や男性の同僚にも知ってもらいたいよね」という意見が多く出たんです。ですので、今後は「Dear WOMAN」という名前の枠に囚われず、男性社員も交えたセミナーを開催していくことにも意義があるんじゃないかなと思っています。

――ありがとうございました!

文/金澤英恵 写真/編集部

サニーサイドアップ
1985年設立。あらゆるジャンルのPR、セールスプロモーションをはじめ、アスリートのマネジメント、スポーツビジネス、オールデイカジュアルダイニング「bills」運営と幅広い領域を手掛けるPR会社。働く環境の整備や社内制度にも力を入れており、「働きやすいPR企業ランキング」やビジネス界のアカデミー賞と称される「スティービー(R)国際賞」などを受賞多数。
URL:http://www.ssu.co.jp/

この連載は、毎月2本公開します。下記の記事一覧ページに新しい記事がアップされますので、ぜひ、ブックマークして、お楽しみください!
記事一覧ページは ⇒ 「こんな会社で働きたい!」