社内の書類が70%も減った!

――本社移転のプロジェクトメンバーは、何名で構成されていたのですか? フリーアドレスに反対する方はいなかったのでしょうか。

 9名ですね。約20年前に赤羽の移転を経験した社員をリーダーに、情報システムや総務、あとは各分野から積極的に意見がもらえそうなメンバーで結成しました。フリーアドレスについて意見は割れていましたが、どちらかというと「良い会社に変えていきたい」という肯定的なメンバーが多かったです。

――八重洲オフィスで経験された方は慣れているかもしれませんが、それ以外の社員の方からはフリーアドレスに対して反発はありませんでしたか?

 移転前から非難轟々でしたね(笑)。最も多かったのは、部署内のコミュニケーションに対する不安の声です。ですが、自分のPCから専用システムを使って検索すれば誰がどこにいるか分かりますし、個人携帯もあるのですぐに電話でキャッチすることもできます。また、書類などの荷物が多くて減らせないという不満は、スキャンしてデータ化したり、保管庫を利用してもらうことを提案しました。

 新オフィスに移転するためには、部署と個人ぞれぞれの荷物を30%程度に減らしてもらわなければならなかったのですが、最終的には移転前と移転後で荷物量を70%ほど削減することができました。私も営業時代の書類が多く、移転のときは心を鬼にして捨てましたよ。多くの書類が「必要で持っていた」というより“思い出”なんですよね。

経営もスリム化 7期連続で最高益を達成

――フリーアドレス以外にも、本社移転の際に改革したことはありますか?

 会議をするためには会議資料を作らなければいけない、それには無駄な時間がかかる、だからムダな会議はやめるという方針になりました。もちろん、チームの週次ミーティングなどは否定しませんが、報告だけならメールでもいいのではないかということです。会議室自体も必要最小限の数だけ作って、大規模なものは外で会場を借りることにしました。

お話を伺った「かっぱえびせんルーム」。扉側はガラス製で中の様子が見えるつくりになっている。他にも、じゃがいも、にんじんなど、カルビーのスナック菓子の原料の名前が付いた会議室が
お話を伺った「かっぱえびせんルーム」。扉側はガラス製で中の様子が見えるつくりになっている。他にも、じゃがいも、にんじんなど、カルビーのスナック菓子の原料の名前が付いた会議室が

 また、以前は何千何万とあった工場・生産ライン・営業所別などの指標を全てグラフ化して週次更新していましたが、現在トップが確認するのは日々の売上進捗と月次・累計のA4用紙のレポートのみ。その他の指標は各部門に任せることになりました。

――物理的な動線がフリーアドレスによってフラットになったと同時に、組織全体の仕組み自体もシンプル化されている印象ですね。そうしたオフィス改革の効果は、具体的にどう表れていると思われますか?

 やはり、業績に集約されるのではないでしょうか。売上高、営業利益ともに2010年3月期から7期連続で最高益を出すことができたのは、こうした改革を積み重ねていった結果ではないかと思います。

カルビーの売上高の推移。2010年3月期から7期連続で最高益を達成している
カルビーの売上高の推移。2010年3月期から7期連続で最高益を達成している

――この連続成長の推移は本当にすごいですね。フリーアドレスになったことで、社員の方たちにも変化はありましたか?

 周りのことがよく見えるので、それぞれが互いをよく見ている感じはしますね。良くも悪くも評価がされやすい環境であることを、誰もが意識していると思います。会長も社長も同じフロアにいるので、「あの人はいつも出社が遅いね」といったことをポツリと言ったりします(笑)。

――会長や社長の席から社員の方一人ひとりの勤怠が見えるというのは、なかなか普通の環境ではないことですね(笑)。御社のフリーアドレスについて、最大の成功要因は何だったと分析されていますか?

 ダーツシステムを取り入れたことですね。でなければ、席はきっと固定化してしまって、フリーアドレス本来の機能は果たせていなかったと思います。あとは、最低限のルールやマナーを守ることでしょうか。弊社では、オフィスで使う机や椅子は自分の持ち物ではなく会社のものだという意識を持ってもらうために、月に1回みんなで簡単な掃除をしています。また、開発中の商品は別ですが、基本的にデスクでの食事は禁止です。これもみんなが気持ちよく使うためのマナーとして設定しています。

――ちなみに、導入から6年が経過しましたが、現在聞こえてくる不満などはありますか?

 やはり、部署内のコミュニケーションが取りづらいという声は今も聞こえてきますね。このダーツシステムを変えることは考えていませんが、例えば完全にフリーで座席を選べる日を設けたり、月に数回は部署で同じエリアに集まって仕事するなど、これからも少しずつ工夫しながら、柔軟なフリーアドレス環境を作っていけたらと考えています。

――ありがとうございました!

文/金澤英恵 写真/編集部

カルビー株式会社
1949年創業。「ポテトチップス」「かっぱえびせん」「じゃがりこ」シリアルの「フルグラ」など、老若男女に親しまれるスナック菓子や食品を作り続けるスナック菓子・食品メーカー。2010年に本社を北区赤羽から千代田区丸の内に移転し、ダーツシステムを取り入れたフリーアドレス制を導入するなど、大胆なオフィス改革を敢行した。他にも、サマータイム制度や在宅勤務制度など、新たな働き方の推進にも力を入れている。
URL:http://www.calbee.co.jp/

この連載は、毎月2本公開します。下記の記事一覧ページに新しい記事がアップされますので、ぜひ、ブックマークして、お楽しみください!
記事一覧ページは ⇒ 「こんな会社で働きたい!」