「山ごもりを前提に、普段から業務をみんなで共有しています」

 かなり早いうちから決めた長期休暇を、実際にちゃんと取れるものなのでしょうか。2008年に新卒で入社し、現在は東京支社のカスタマーサポートサービス部で部長を務める加嶋美穂さんが体験談を語ってくれました。

 最初に「山ごもり休暇制度」ができると聞いたときは、どう思いましたか。

「正直、1週間の休みを取るのは現実的じゃないと思いました。当時の東京オフィスは社員が6、7人しかいなくて、必然的に仕事のボリュームも多かった。そもそも有休を取る人がまわりにいなくて、新卒で入った私はそれが普通だと思っていました」

カスタマーサポートサービス部 加嶋美穂さん
カスタマーサポートサービス部 加嶋美穂さん

 そうした状況でいきなり9連休を取りなさい、しかも会社との連絡は一切NGですよと言われたら、戸惑いますよね。

「休み中の引き継ぎが大変だよなあというのが、私も含めて周りの人たちの印象でした。でも実際に休んでみたら、意外と大したことはないんだと思いました。最初の頃は山ごもり前には遅くまで残って一生懸命引き継ぎをしていましたが、制度も定着して、今では引き継ぐことにもそこまで労力がかからなくなった実感があります」

 それは、仕事のやり方に変化が生まれたということでしょうか?

日頃から仕事の合間にマニュアルを作って、うちの部署でいえばメルマガの発行やサポートサイトの更新といった業務を、誰でもできるようにしました。私は管理業務が主なのですが、意識的に業務を分散させるようにもなったと思います。ある人だけに依存するような仕事があると、山ごもりのときに引き継ぎが大変になるので、他の人にも普段から業務を依頼しておくんです」

有給休暇の取得率もアップ

 ちなみに、加嶋さん自身はどんな風に山ごもり休暇を過ごしているのでしょうか。

「最初の年は、前半は会社の同期と韓国へ、後半は大学の友達とハワイに行きました。日本にいると通信も自由にできてつい仕事のことが気になっちゃうので、海外に行くことが多いです」

「山ごもり休暇」でハワイに! 観光スポットはめぐらず、ただただのんびり過ごしたそう(写真提供:加嶋美穂さん)
「山ごもり休暇」でハワイに! 観光スポットはめぐらず、ただただのんびり過ごしたそう(写真提供:加嶋美穂さん)

 こっそり会社に連絡を取ってしまうことはないですか、と聞くと「それはないです。根がまじめなので(笑)、会社に提示されたルールは絶対守らなきゃと思いました」とのこと。また、山ごもりを通して、働くことに対する意識の変化も生まれたといいます。

「もともと私はすごく働きたい性分だったんです。風邪をひいて体調を崩すのも決まって土日というくらい、休むことがなかった。でも今は山ごもりの楽しみがモチベーションになって、頑張ろうと思える。仕事と休みのメリハリがつけられるようになったと思います」

 長期休暇を取っても支障なく業務がまわる体制が定着するようになったおかげで、普段の有休もとるようになったという加嶋さん。会社全体でも、制度の導入前と導入後を比較すると、有給休暇の平均取得日数(年間)が約3.5倍になったそう。

 山ごもり休暇制度はさまざまな好循環を生んでいるようです。

 次回は制度が生まれた背景について、人事部の桐生さんに詳しく伺います!

文/谷口絵美

株式会社 ロックオン
2001年設立。業界シェア1位の広告効果測定システム『アドエビス』をはじめ、さまざまなマーケティングソリューションを提供。2014年9月、東京証券取引所マザーズに上場。9日間の連続休暇「山ごもり制度」や、社外で知識・経験を得るための「武者修行制度」など、社員の発想を刺激する取り組みに注力している。
URL:http://www.lockon.co.jp/

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