2015年に、リクルートキャリアが主催する「グッド・アクション」を受賞したエストコーポレーションの「クエスト制度」。社員自らが仕事と報酬を“つかみどり”できるというこの面白い制度について、前編「仲間と『報酬つかみどり』 おもしろ制度の会社に潜入」でご紹介しました。こちらの後編では、制度を立ち上げた森脇かほりさんに、「クエスト制度」ができた背景を伺います。
きっかけは大量採用で社員が増えたこと
――クエスト制度を立ち上げた背景には、どんな課題意識があったのですか?
きっかけは、業務拡大による大量採用でした。私が入社した2012年は全社員合わせて20名程度だったのですが、翌年の2013年に40名ほど採用したんです。社員が一気に増えて、コミュニケーションが取れなくなりました。
――それだけ急激に社員が増えると、社内の雰囲気にも影響が出そうですね。
2013年を境に、社員の意識には大きな変化が生じました。中途入社の社員には、「この部署で、こういうミッションがあるのでぜひ来てほしい」と募集をかけてきましたから、どうしても彼らの意識は「会社」より「仕事内容」に向いてしまいます。さらに、当時は社長の清水が部署ごとに「独立採算」を採用し始めた時期でもあったので、なおさら社員の帰属意識は自分の「部署」になりました。
――帰属意識が「部署」になると、どんな問題が起こるのでしょう?
たとえば、既存事業に携わるメンバーから「自分たちの稼いだお金が新規事業に使われて、ちっとも還元されない」と不満が出たりします。「独立採算」の考え方を取り入れたので、当然といえば当然なのですが……。でも、ベンチャー企業の真価は、やはり革新性のある事業を継続的に追及する点にあるはずです。このままではイノベーター集団としての社風が損なわれてしまう。社内コミュニケーションの活性化は重要な課題だと感じていました。
――なるほど。「インナーコミュニケーションの活性化」という視点から「エストファミリー制度」(※)なども生まれているのですね。
はい。エストファミリーは2015年5月のオフィス移転後から開始しました。年齢も部署も異なるメンバーで形成しているので、社内の交流の場として役立っています。
――そこからどのようにクエスト制度は出来上がったのですか?