イケメンとの表参道デートが思考を停止させた

 そのイケメンは、20代後半でとにかく親切。孝子さんの不動産投資についての悩みに答えつつ、「今どこに住んでるの?」「一人暮らしで不便なことある?」「趣味は何?」など、どんどんプライベートな質問もしてくるように。実は孝子さんは、彼氏いない歴42年。男性に対する免疫がありません。そんな彼女でしたから、「イケメンが私に興味を持ってくれている」……と思ってしまったのです。

 「休みはどうしてるの」と聞かれ、表参道でカフェ巡りと答えた孝子さんに、イケメンは「じゃあ今度はお休みの日にカフェに一緒に行きますか? 不動産の話もそこのほうが話しやすいでしょ」とニッコリ。……はい、孝子さん、落ちました。

 お気付きのことと思いますが、このイケメン相談員は、この不動産投資会社の営業マン。この会社はこうしたセミナーを数多く行っており、イケメンや美人を採用して営業し、親身になっているふりをして不動産を売る「デート商法」のようなやり方でビジネスをしているようでした。

 土曜に表参道ヒルズでデート(注・営業です)の約束をしてLINEの連絡先をその場で交換。デートまでの間もマメにLINEが来ます。その内容は投資の話だけでなく雑談混じりで親近感もどんどん湧いてきます。「誠実な人だなあ」と好感度はMAXに! デート当日は、「孝子さんってかわいいですね」という殺し文句(?)まで飛び出しました。そのまま不動産投資の事務所に出向いた孝子さんは、あっさり契約書にサインをしてしまったそう。

 ただ、孝子さんはもともと頭の切れるバリキャリ女性です。契約した後冷静になり、たまたま見つけた私の本に、「不動産投資するなら中古物件」と書かれていたのを見て心配になり、私のところに来た、というのが真相だったのです。

 「良心的な会社なら、こんな物件は売らないと思うよ?」という私の一言ですべてを悟った孝子さんは、「そんなに高く買わされてたんですか……!」とがくぜん。

 でも、嘆いていても仕方ありません。損失を最小限にするべく、やるだけのことはやりましょう!

 まず、契約を再確認。残念ながらクーリングオフはできませんでしたが、履行前なので違約金を払えば契約を解除できる段階でした。ためらってしまう金額ですが、このまま契約を履行してしまったら、人生設計に支障が出るレベルの損が出てしまいます。孝子さんは違約金150万円を支払い、契約を解除しました。(その後イケメンは、態度が冷たくなったみたいです……)

 もっとも、独身一人暮らしで将来が不安という孝子さんの場合、不動産投資を始めること自体には私は賛成でした。ですので、今度はきちんと収益が上がる物件を一緒に探すことにしました。

 良い物件を選ぶ基本は、中古であること、駅から近いこと、相場と比較して安いこと、賃貸需要が旺盛なエリアであること、将来性があり、利便性があるエリアであることなどです。そして、良い管理会社がついている物件が望ましいでしょう。不動産投資での成功の可否を握っているのは、管理会社と言っても過言ではありません。また、投資用物件の場合、投資回収の観点から、頭金は少なければ少ないほどいいです。せめて物件価格の1割程度に収めましょう。

 孝子さんはもともと頭の良い人ですので、その後条件に合った物件を購入し、あらためて不動産投資を始めることができました。

 不思議なものですが、私の経験では、家を買った女性はモテるようになります。どうも余裕が出てくるのが理由のようですが、孝子さんに春が来るのも遠くないのかも?

【過去記事】家を買った女性が、その1年後に結婚したエピソード⇒「一生独身のつもりで買ったマンション 結婚のお荷物に」

今回の学び

今回の格言「恋も投資も、相手選びは慎重に」
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聞き手・文/相馬留美 イラスト/北村みなみ