「勉強ができる」と、金融リテラシーの高さは無関係

 良子さんが「あれ?」と思ったのは、実家の母親と電話をしていた時にふと出てきた、「そういえば良子、結婚資金、もう結構たまっているんでしょ?」という言葉でした。そもそも貯金はいつか結婚する時のためのものでしたが、結婚の予定もまだなかったので、すっかり忘れていたのです。そのため、送られてきていた運用報告書も目を通していませんでしたが、母の言葉で初めて確認して、貯金の減りっぷりにがくぜんとしたというわけでした。

 お母さん、さすがです。

 さて、良子さんへの私からのアドバイスは、まずは手持ちのファンドの整理から。残念ながらもう上がる見込みのなさそうなファンドは損切りして、取りあえず運用商品は日本株式のインデックス型ファンド(日経平均株価をベンチマークとするもの)などを選び、投資ポートフォリオ全体をリバランスしました。

 ただ、彼女の場合、そもそも貯蓄の習慣があるので、それ自体は何も問題ありません。月5万円はこつこつ積み立てていくことにして、また手堅く貯蓄していくことを決めました。

 これだけで、貯蓄額がまた1000万円に達するのも時間の問題でしょう。

 また、今回の失敗で良子さんが学んだのは、「人を疑うこと」。

 もちろん、やみくもに他人を疑うということではなく、こと金融商品に限っては、他人の話が本当なのかを、冷静に考えてみようということです。

 良子さんは、まず周囲の先生が「いいよ」と言っていたので投資を始めました。とはいえ、いくら勉強ができる先生方といっても、金融リテラシーが高い人ばかりとは限りません。良子さんの場合、持っていた貯金をいきなりいっぺんに投資に回してしまう前に、「本当に全部、今、投資に回していいんだろうか」と疑ってみてもよかったかもしれません。

 また、「メガバンクの銀行マンは、私にとって悪い商品を売るはずがない」というのも、単に良子さんの思い込みでした。すすめられた商品をきちんと勉強して精査していたら、賢明な良子さんはきっと買わなかったはずです。

 相談後の良子さんの趣味は、「金融商品のパンフレットを読むこと」。「金融機関には手厳しくなりましたね」と良子さんは笑って話してくれました。今では、投資信託の「目論見書」と呼ばれる分厚い書類も読み込んでいるそうです。

 また、実は良子さんは保険商品も、職場の学校に来る生保レディに言われるままに加入していたため、月5万円も払っていました。これも大きく見直し、がん保険と公務員の教職員用の共済のみに絞ると、月5000円になり、4万5000円が浮き、それも貯蓄に回せるようになりました。

 投資信託や保険の見直しは、保守的な彼女にとって心理的にもかなり大変だったようで、私のところに相談に来てからここまでたどり着くのに2年かかりました(笑)。

 とはいえ、自分の軸を持った良子さんは、ここからぶれることなく、貯蓄に励んでいくことでしょう。

今回の学び

今回の学び「おすすめにご用心」
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聞き手・文/相馬留美 イラスト/北村みなみ