彼氏いない歴=年齢、友達ゼロ

 老後が不安、というのがみのりさんの悩みでしたが、その思いが強過ぎて、「健康診断を受ければ健康過ぎて何も引っかからないのがつらい。早く死んでしまいたい」と言い出すほど。相談しているうちに、「毎日が消化試合」というフレーズまでが飛び出しました。

 日々を淡々と消化するだけ。私はこの一言で、彼女が「その日一日を何事もなく過ごせればそれでいい」という思いで日々を暮らしていることに気付きました。

 しかし、なぜみのりさんは毎日を「消化試合」だと思い込んでいるのでしょうか?

 私はふと尋ねました。
 「みのりさんの趣味はなんですか?」
 「うーん……ないですね」
 「友達と何かしたいことはある?」
 「いや、友達はいないし……」
 「今やりたいことは?」
 「別に……」

 なんだか私がみのりさんに冷たくあしらわれているようにも見えますが(笑)、そうではなく、彼女は「こんなふうにしか人と話せない」ということが分かってきました。他人に心を開く方法が分からない、というニュアンスのほうが近いでしょう。

 彼女は人付き合いが「嫌い」なのではなく、「苦手」だったのです。

 みのりさんは会社と家の往復の日々で、家に帰れば一人っ子で親とも会話がそれほどありません。外出するとしても図書館で、これもあまり人と話す機会はなさそうです。

 本当は、彼氏も欲しいと思っているようでした。派手さはないものの清楚な見た目で、顔もかわいい女性。モテそうに見えますが、出会いもなく、「彼氏いない歴=年齢」とのこと。

 多くの女性の相談を受けるにつれ、年収が低くても生活が充実しているという人には、一つの共通点があると私は実感しています。それは、「友達が多いこと」です。

 お金を持っていなくても、友達が多い人は、そのコミュニティー内で友達とシェアしたり、助け合ったりすることができるため、自分の収入以上の生活ができるからなのです。

 お金を「金融資本」とするなら、コミュニティーは「社会資本」。今のみのりさんは、金融資本はあっても、社会資本はゼロ。彼女の「老後不安」はここに原因があるのでは? と考えた私は、ある提案をしました。