いい服を買ったら、すぐ着よう

 はやりに乗ってすぐ飽きてしまう人もいる一方で、大枚はたいて手に入れたバカラのグラスを後生大事にとっておく人もいますよね。でも、せっかく一生懸命働いたお金で買ったんだから、盛大に使いましょうよ。お金って投資なので、買ったものを大切にするのはよいことですが、使わなきゃ損なだけです。高い服を買ったらすぐ着ましょうよ。体形が変わって着られなくなってからじゃ遅いですからね(笑)。最高級のグラスで毎晩ビール飲みましょうよ。買った包丁もしまっておかないですぐ使いましょう。

 「損した」とか「お金を失った」と思うようなものなら買わなきゃいいんです。好きでもないものを食べておなかを満たすくらいなら、その分節約して月1回でも回らない寿司屋に行ったほうが僕はいいと思うんです。

本当に欲しくて買ったものは、自分への投資になる

 それとよく人から言われるのが、「野呂さんは好きなことやってお金もらってるからいいじゃないですか」って言葉。でも僕、好きなことなんて1回もやったことないんです。

 僕は20年以上放送作家をしていますが、自分がやりたいコントの1つもできたことがありません。本当はもっとエロいのとかバイオレントなやつがやりたいですけど、放送できない。その他にもタレントは誰を使えとか、3時間以内で撮影できるものとか、天気に左右されないものとか、いつだって制約だらけで自分の好き勝手に作れるものなんて1つもありません。

 でもそれはもちろん僕だけじゃなくみんなだってそうで、社会で生きている限り、好きなことなんてなかなかできないんです。裸で外を歩きたいけどそれやったら捕まるし、お風呂大嫌いだけど入らなかったらみんなに迷惑が掛かる。200kmもスピードがでる車に乗ってたって40kmでしか走れないし、信号は止まらなきゃいけない。僕、結構ちゃんと生きて税金も納めているけど、道1本好き勝手に走ることもできないんだっていつも思いますもん。でもそういうものなんだと思って誰もが社会の中で生きているんですよね。

 だいぶ話がそれましたけど、本当に欲しいものを買って、一生懸命それを使ってまた稼ぎましょうよ。本当に欲しくて買ったものや体験は、間違いなく自分への投資になるはずですから。

聞き手・文/小泉なつみ イラスト/田中小百合