バラエティー番組の進行役に、変なリアクションは不要

 テレビ局のあるディレクターさんに聞いた、こんな話があります。バラエティーの新番組で、司会者と共に進行役を務める女性アシスタントを決めるオーディションがありました。この場合アシスタントに求められるのは、隣にいて「とにかく流れを邪魔しないこと」「よどみなく進行していくこと」です。

 オーディションの場には、数々のタレントさんやモデルさんが来ました。一人ずつ順番に、自己紹介をしてもらいました。女性たちは、当然、「○○から来ました。○○です」などと答えますよね。そこでディレクターさんは、ノリがいい人間を演じるように「逆にー!?」「からのー!?」といった、前後の文脈を無視したむちゃなフレーズを投下するそうです。

 そこで爪痕を必死で残そうとするタレントさんやモデルさんは、ボケたり一発ギャグをしたり、乗っかるような反応をしたりするそうです。一方、ディレクターの意味不明な発言に対して、「いや、逆はありません」「からの、はなくて以上です」という冷静なリアクションをする人もいます。

 ディレクターが求めるのは、後者。それが、視聴者と同じ反応だからです。

 芸人がボケたときに、「今、そのハナシは関係ないじゃないですか!」「そんなハナシ、私言ってません!」という常識的なリアクションこそ、ツッコミです。芸人のボケに重ねるような変なリアクションは、最も不要なんですよ(笑)。本当にちゃんと会話ができる人こそ求められるんです。

面白い話ができる人だけが、コミュニケーションの達人ではありません (C)PIXTA
面白い話ができる人だけが、コミュニケーションの達人ではありません (C)PIXTA

 突拍子もない自由な物言いが面白がられ、よくテレビで見かける女性タレントさんたちがいらっしゃいますが、そんな彼女たちも、自分に話を振られたときに変なことを言っているだけ。人の出番や人の話のときは、自己主張せず「へぇ~!」「ああ、そうなんだ!」と、ものすご~く、きちんと聞いています。

 僕も出演していて、話しているこちらがどんどん乗ってきて、もっと話をしたい気分にさせてくれるタレントさんっていらっしゃるんですよね。

 では、「聞き上手」を目指しつつ、いかにして自分の居場所も見つけていけばいいのか。

有名芸能人が実践している自分ルール

 売れている多くのタレントさんに共通しているのが、自分ルールを一つ決めて臨んでいること。「自分はこれを頑張ろう」と決めて、実践しています。

 例えば、ますだおかだの岡田圭右さん。「パァ!」「閉店ガラガラ」などのオーバーな一発ギャグなどで、どんな人にも絡んでいける面白い芸人さんとして認知されていますよね。そんな岡田さんも、2002年にますだおかだが「M-1グランプリ」で優勝して漫才で評価されるも、バラエティー番組のひな壇に呼ばれた時に思うようには笑いを取れないことが続いたそうです。

 今日も話せなかった、自分を出せなかった……と悔しい思いをした岡田さん。そこでどうしたかというと、「この中で一番大声を出そう」と決めたそうです。

 MCに「岡田」と呼ばれたら、大声で「はーい!」と返す。スベったとしても、「すみません! すべりました!」と元気な声で話す。話を振ったほうは「オマエ、よく分からんけど元気やな……(笑)」とは思いますよね。

 出演者の中で一番大きな声を出すことは、すぐにできます。そこだけは負けないでやっていこう。そう考えて続けていたら、他の番組から声が掛かることも増えていったそうです。