鍵は〇〇を最適に配分すること!
この研究では、ある重要な過程を設定しています。それは、仕事や執筆などを行うための集中力は有限であるという設定です。
このコラムでも何度もお伝えしてきましたが、時間も人もお金も、全ての世の中の資源は有限だからこそ、人は悩む。その解決のヒントのために経済学が存在するのです。時間やお金と同様に、人間の集中力も有限なんですね。
例えば、時間を十分にとっているはずなのに、作業が全く進まないことってありませんか? それは、ほかの仕事や作業に限られた集中力を奪われている可能性があるのです。人間は、24時間ずっと最大限集中した状態でいられることはできません。だからこそ、集中力の総量をどう配分するかが、作業を終わらせるための鍵になるのです。
では、なぜ締め切りがあると仕事ができるのでしょうか。
締め切りは、集中力を配分するバローメーターになっているのです。何か作業をするためには、スケジュールに余裕を持つのではなく、集中力を最適に配分するための小さな締め切りや、集中力をぐっと高める小さな引き金をいくつも作っておくことのほうが重要なんだそうです。
松尾氏は論文の最後に、反省すべきは「もっと早くやっておけばよかった」ではなく、「もっと集中すべきだった」と指摘しています。あぁ、耳が痛い…。
時間があればあるほど、いい仕事もできるのか?
一方で、時間を確保するのも重要だよ!との声もあるでしょう。ただ、時間があっても夏休みの宿題を8月30日にまとめてやっていたなんて人も少なくないのではないでしょうか?
英国の政治学者シリル・パーキンソン氏は、「仕事の量は、完成のために与えられた時間をすべて満たすまで膨張する」と言っています。やはり、創造的な仕事をするために必要なのは、時間の長さでなく、集中力を高めるきっかけを多く持つことのようですね。
忙しい人ほど、いい仕事をするなんて言われるのはあながち嘘ではないようです。でも、無理はし過ぎないように。私も、頑張らなくては!
■参照 独立行政法人 産業技術総合研究所 松尾豊「なぜ私たちはいつも締め切りに追われるのか」
文/崔真淑 写真/PIXTA
修正履歴:公開時、本文に誤りがありました。現在は修正済みです(2016年8月10日)
記事一覧ページはこちら ⇒ 【崔真淑の「女子とキャリアの経済学」】