企業不祥事と株価はどうなる?

 株価とは、その企業に対して多くの投資家がどう評価しているかの表れです。この企業は危ないぞ! 赤字が続くぞ! と多くの投資家が考えていれば、株価は下落し続けるのが一般的です。

 そして不祥事が起きた場合、その会社の株価がどうなったかを経済学の視点から研究した論文は多数存在します。それらから、一つの傾向が見えてきます。例えば直近10年間に不祥事を起こした上場企業の平均的な株価パフォーマンスを見てみましょう。不祥事が発覚した後に、右往左往はあるものの、株価は下がり続けて、150日間にわたって累積株価パフォーマンスはマイナスを示していました。

 つまり、「株価が下がり続ける=投資家や多くの人がその企業に対して危機感を募らせ続けている」、ということを示しているようです。もちろん、株価に影響する要因は業種やマクロ経済……とたくさんあります。しかし、それらの要因を統計的手法によって除いたとしても、長期にわたって不祥事が株価にマイナスに影響していました。

 不祥事といっても、株主への評価を良くするための粉飾決算、管理の滞りによる工場爆発、見栄のための虚偽記載……様々なタイプがあります。では、不祥事をタイプ別に分けて累積株価パフォーマンスを見てみると何が起きるでしょうか?

 なんと、リコールや偽装表示といった、製品に関するものは、特に株価下落が顕著という傾向が報告されているのです。会社の利益の源泉である、製品信用を失うことは、長期にわたって株価も業績も非常に厳しくなることを示しているのです。

 雪印食品という会社を覚えていますか? この会社は、食肉偽装問題で消費者の信頼を一気に失いました。その後は、事業ごとに解体されて買収・吸収されていきました。一度信用を失った食品を好んで買う人はいませんよね……。

 自分の勤め先、または取引先の上場企業に不祥事が起きたら、どんな品質問題に関することなのか。世の中からの評価や先行きに関して何か異変が起きていないかを探るためのバロメーターとして株価をウォッチするのはどうでしょうか。

(c)PIXTA
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 将来を見すえるうえで、株価の観察は、投資に興味がなくても必要な視点なのかもしれません。私も、自分事として、取引先企業の株価をウォッチしてみようと思います。

文/崔真淑 写真/PIXTA

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