今年4月に女性活躍推進法が施行され、女性採用に積極的な企業にさらにフォーカスが集まっています。私が普段接している資本市場の世界でも、女性活躍を推進する動きが出ています。経済産業省と東京証券取引所が、女性活躍推進に積極的である優良上場企業を「なでしこ銘柄」として選定し、発表する活動を行っています。

 その他には、女性活躍を推進するだけでなく、女性管理職・役員比率が高い企業ほど、業績や株価が良いといったレポートや報道も散見されるようになりました。例えば、女性役員が一人もいない企業とそうでない企業では、後者の企業業績が良いという報告が多数されています。

 でも、こうした報告の多くは、企業業績がいい企業ほど女性活躍推進を進めているのか、女性活躍推進を進めているから企業業績がいいかの因果関係は明確にはしていません。

 今回は、そうした因果関係について、経済学の視点からの研究を紹介していきます!

その因果関係を探るのが意外と難しい

 実は、アカデミックの世界では、女性活躍推進と企業業績の関係については、明確な理論は確立されていません。しかし、女性活躍推進によって企業にどのような影響があり、その波及経路を明確にしようと試みた研究は多数されています。

 仮に、女性活躍を推進している企業ほど企業業績が良かったとしても、その時代だから成立しただけかもしれません。更には、女性を多く採用しがちな業種は、相対的に利益率が良い企業が集まっているだけかもしれません。例えば、上場企業に限っていえば、IT企業と製造業では、平均的には前者の利益率が圧倒的に高い傾向にあります。また、IT企業は創業年数の浅い企業が多いからなのか、女性採用に抵抗の無い企業も多いようです。

 女性活躍推進と企業業績の因果関係を考えるには、時代・業種・創業年数・企業規模…女性採用に影響がありうる要因を考慮しないと、この謎を解くことはできないのです。