因果関係に大きく影響しているのは「○○費削減」

 女性管理職は、男性管理職に比べて賃金が安い傾向にあり、その「人件費削減効果」(!)が企業業績に良い効果をもたらしている可能性が示されているのです。(※出典元:RIETI Discussion Paper Series 11-J-073 「日本の労働市場における男女格差と企業業績」)

 でも、こんな声も聞こえてきそうです。女性は男性に比べて高学歴者が少ないことや、女性はライフサイクルが複雑なので勤続年数が男性より短い傾向にあるから、平均的に女性管理職の方が男性管理職より賃金が低いだけでしょ!と。

 しかし、こうした要因を経済学の統計的手法を用いて取り除いても、女性管理職による人件費削減効果による企業業績への影響が確認されているんですね。
 
 アメリカの中央銀行の前々議長アラン・グリーンスパン氏は、議長になる前はコンサルティング会社を経営していました。彼の会社は、ほとんどが女性社員だったようです。なぜかと聞かれた彼は、「女性は能力に関係なく、賃金が安く採用される傾向にあるからさ」と答えたとか……(※参照元:『意外と会社は合理的 組織にはびこる理不尽のメカニズム』レイ・フィスマン、ティム・サリバン著/日本経済新聞出版社)。

 私は、女性を積極採用する会社の全てが、人件費を低く抑えたいと考えているとは思っていません。ただ、背景にそういった狙いがないのか、働く女性として自分は安く見積もられていないか、これからのキャリアを考える上でも、折に触れて再考する冷静さを失わずにいたいものです

【参考URL】
■RIETI Discussion Paper Series 11-J-073「日本の労働市場における男女格差と企業業績」
『意外と会社は合理的 組織にはびこる理不尽のメカニズム』(レイ・フィスマン、ティム・サリバン著/日本経済新聞出版社)

文/崔真淑 写真/PIXTA

この連載は、毎週水曜日に公開しています。下記の記事一覧ページに新しい記事がアップされますので、ぜひ、ブックマークして、お楽しみください!
記事一覧ページはこちら ⇒ 【崔真淑の「女子とキャリアの経済学」】