労働時間が長くなるほど仕事満足度が増していく

 この論文では、仕事から得られる達成感、自己効力感、仕事で必要とされているという自尊心といった金銭的でない要素を仕事満足度と定義しています。これらが、労働時間とどんな関係を持つかを、過去4年間のデータを基に分析しているのです。

 すると……、なんと労働時間が長くなるほど、仕事満足度が増す傾向が見られたのです。

(C)PIXTA
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 もちろん労働時間以外にも、仕事満足度に影響及ぼす要素はたくさんあります。そこでデータが読み取れる労働時間以外の条件を一定とした場合でも分析していますが、やはりこちらの分析でも、労働時間が増すにつれて、仕事満足度が上がっていく傾向が見られました。

 具体的には、週当たりの労働時間が55時間を超えると、仕事満足度が上昇していくことが観察されています。労働時間が長くなるほど、仕事が面白くなり、仕事から得られる満足度が上がっていくようです。

 たしかに、長~く働いていると“やった気になる”ことってありますよね。そんな私も執筆の仕事のときは、長~く考え込むだけでやった気になり、編集の方を困らせています(汗)

 でも! この研究では、もう一つ大切なことが示唆されています。

長時間労働で仕事に満足してもメンタルヘルスは悪影響

 メンタルヘルスと労働時間との関係については、仕事満足度とのような関係性は見られず、労働時間が長くなるほどに悪化する傾向が見られたのです。長時間労働でワークハイになって気持ちは満足したとしても、メンタル面では悪影響が出るようです。メンタルに影響が出れば、いずれ体にも悪影響が出るでしょう。

 それにも関わらず、長時間労働をしてしまうのは、行動経済学で指摘されている「オーバーコンフィデンス」という人間の思考癖が影響しているのではないかと博士たちは分析しています。

 「オーバーコンフィデンス」とは、現状の健康状態に過度な自信を持ち、この状態がずっと続くという思考癖です。

 必ずしも仕事結果につながらないかもしれないのに、仕事満足を得たいがために長時間労働をしてしまう。そして、健康に過度な自信を持ち、健康を損なうまで気付かない…なんてことが起きているのかもしれません。

 「あるある」……と感じる人も多いのではないでしょうか。満足度を得たいがために長時間労働していないか、私自身も振り返ってみようと思います。やっぱり、健康あっての働き女子ですからね!

文/崔真淑 写真/PIXTA

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