「old boys club」に女性一人が入ると

 2009年の、Adams博士とFerreira博士の論文に非常に興味深い指摘がなされています。1996年~2003年のアメリカの大手上場企業を対象に、女性取締役が男性だらけの取締役会に入った場合に、何が起きるかを分析しています。そしてこの論文では、高齢の男性だけの取締役会を「old boys club」と皮肉っています(汗)。

 というのも、男性同士だとつるみやすいし、モノが言える雰囲気が作りにくいんじゃないの? ってことを暗に示唆しているんですね(もちろん必ずしもいう場合ばかりじゃないと思いますが)。では、そんなところに女性取締役が入ると何が起きるのでしょうか?

 博士たちは、女性という異性だからこそ言いやすい場面や、取締役会に何かしらの影響が存在するのではないかと仮説を置きました。もちろん、これを測定するためには、企業タイプ、取締役平均年齢、取締役会の人数……いろんな要素が深く関わってきます。前回紹介した研究同様に、経済学の中の統計的手法で、こうした要素を取り除いて女性取締役の影響を分析しています。

女性が取締役会に出席すると社長交代が促されやすい

 まず、女性取締役の就任後で、取締役それぞれの取締役出席率を分析しています。ここでは、新任の女性取締役が取締役会に入ってくると、新任の男性取締役が入ってきたときよりも、既存の取締役の出席率が改善したということを報告しています。女性はなんだかんだで真面目な生き物なだけに、律儀に出席している姿に刺激を受けているかもしれません。

(C)PIXTA
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 もう一つは、女性取締役は「old boys club」に入ってつるむことがないので、取締役会で言いたいことを言う存在になっているかもしれないという仮説を置き、分析しています。女性取締役が入ってくると、業績が悪い企業の場合は、社長交代が促されやすいという傾向が示されたのです。男性同士だと空気を読みすぎて言い出せないところに、女性がバシッと斬りに行っているのかしれません。私も就任先で、経営陣の方々にバシバシ物を言えるようにならなくてはと思います(笑)

 この研究は身近な職場でも起きているのではないでしょうか。異性だからこそ、男性間のしがらみにとらわれなくてよい。男性だらけの職場は、女性にとって働きにくい場面も多数あるかもしれませんが、意外なほどに自分の発言を出しやすいところもあるのかもしれません。なにごとも一長一短ですね。

文/崔真淑 写真/PIXTA

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