社会保険と税制をうまく使おう

 さて、手取り収入をお分かりいただいた上で「お金をためよう」と思ったら、食費の節約の前に、社会保険と税制を活用する方法を考えましょう。

 民間の保険の加入率は、88.7%(「平成30年度 生命保険に関する全国実態調査(速報版)」)と、約9割の方が民間保険に加入していますが、実は私たちは、誰もが国が用意してくれている「社会保険」に加入しています。そのため、もしもの入院や死亡について、最低限の保障が用意されているのです。

 とは言え、その保障内容を知らなければ、給与天引きで納めている社会保険を生かすことができません。さらに、せっかく手に入れた8割の手取り収入のお金を使って、多過ぎる保険に加入することになってしまいます。「なんとなく」や「保険は入らなきゃ」という思いはいったん捨てて、本当に保険が必要かどうか、国の保障や職場の保障、そして、貯蓄額を踏まえて考えてみましょう。

 社会保険や税制を活用して、もしも民間保険に入り過ぎているとしたら、保険を見直すことで、必要な保障は備えつつ、自分が使えるお金を増やすことができます。 気になる国の保障とその備え方については、こちらの過去記事をご覧ください。


税制の思い込みには要注意

 社会保険と税制を活用して、ムダなお金の節約ができれば、浮いたお金を、かけたいところに回しましょう。

 浮いたお金で旅行をするもよし、ためるもよしですが、「老後資金をためたい」というのなら、掛け金に対して税金が安くなる所得控除がある「個人型確定拠出年金(iDeCo)」が適しています。 iDeCoでは、老後のお金を育てながら、税金が安くなるというメリットがあるのです。

 iDeCoに関して、住宅ローン控除を使っているご相談者さんからよくいただく疑問があります。それが「今、住宅ローン控除のおかげで所得税がゼロなんですが、それでもiDeCoをやるメリットはありますか?」というもの。

 答えは、Yes!

 次の表の例をご覧ください。これは、年収450万円、35歳独身の人を例にした税金の試算です。

 【現状】では、住宅ローン控除もiDeCoもなく、所得税と住民税を合わせた納税額は、約32万円です。この人が数年前にマイホームを買っており、この年の住宅ローン控除が20万円だったとすると、所得税は0円で、納税額は住民税だけの約11万円に下がります。

 iDeCoで税金を安くなるといっても、所得税が0円では、0円以上には安くならないので、iDeCoをする意味がないと思っても無理はないかもしれません。

 でも実際には、この場合でもiDeCoに加入する効果はあります。

 実は、iDeCoで使う控除と、住宅ローン控除では、使う控除の順番が異なるので、iDeCoの控除と住宅ローンの控除は両方一緒に使えるのです。

 表の左から3列目にある通り、iDeCo単独でスタートしたときに安くなる税金は、約5万円ですが、4列目のように、住宅ローン控除で所得税が0円のときにiDeCoを始めても、所得税と住民税の減税額は合計約25万円となり、iDeCoの控除効果を生かすことができるのです。

著者試算
著者試算

 また、よくある思い込みが、「iDeCoをしたら節税になる!」と知りながらも、ふるさと納税をするときは、節税したことを忘れて、年収だけで目安額を判断するケースです。

 ふるさと納税をして、自己負担が2000円で済む額の目安は、住民税で決まりますから、iDeCoで納税額が下がったら、それに伴って、ふるさと納税の最適な目安額も下がるのです。

 先ほどの表の例と、過去記事でしっかりと確認してくださいね。