所得額が大きくなってきたら?

 ハンドメイド販売の所得の規模が大きくなってお小遣い稼ぎや副業の範囲を超えたり、それを本業にして生活をしていこうと思ったりした場合は、「事業所得」として開業届を出しましょう。そうなると、帳簿はつけなければなりませんが、その代わり、もしも赤字になったときは他の給与などの黒字の所得と通算できます。さらに青色申告の届出を税務署に提出すると、収入から最大65万円を差し引けたり、その年に生じた赤字を翌年以後に繰り越せたりと、税金上有利になります。

 収入が増えてきたときは、本格的な帳簿のつけ方やどのような特典を受けられるかを、税務署や税理士の無料相談会なども利用して、相談してみるのもおすすめです。ハンドメイド品の販売が、どれぐらいで規模が大きいといえるのか、その線引きはなかなか難しいところです。そこで、収入の記録と経費の資料を保存しておき、分からないことは、気軽に税務署に尋ねてみましょう。最近の税務署は親身になって、丁寧に教えてくれます。なお、問い合わせたときは、後から確認することが出てくるかもしれないので、その回答内容と回答してくれた「○○税務署の△△課の○○さん」を控えておくとスムーズでしょう。

 最後に、注意点を1つ。「得意のハンドメイド品が売れるのはうれしいし、ちょっとしたお小遣いにもなって一石二鳥!」と思って、赤字から始めたことが、だんだんと作品のファンがついて、利益が出るケースもあります。それがうれしくて頑張っているうちに10万円、100万円、300万円……と、年々収入が増えたものの、確定申告するタイミングが分からなくなる人もいます。税務署から指摘を受けてからではショックが大きいですし、加算税などのペナルティが発生することもあります。資料があれば、申告期限を過ぎても申告することはできますから(金額によっては延滞税がかかります)、まずは、資料を保存する癖をつけておきましょう。

文/前野彩 監修/備順子税理士 写真/PIXTA