放っておくと毎年4万円減の年金受給が一生続く

 冒頭にお伝えした通り、日本に住む人は20歳~60歳になるまで国民年金保険料を納める義務がありますから、40年間納めると、年間78万100円(平成28年度価格)の年金を一生受け取ることができます(国民年金保険料や年金額は、物価や実質賃金の状況により毎年見直されます)。

 でも、学生納付特例を使ってそのままにしておくと、1年間で約2万円、2年間なら約4万円減額されます。つまり、2年間放っておくと、4万円カットされた年金額(=約74万円)が一生続くことになるのです。

 ソン・トク論で考えてみましょう。

 例えば、

2年間分の追納額約36万円 ÷ 老後に増える年金額4万円 = 9

 という値が出ます。この「9」は年数を表します。つまり、追納分の36万円を納めても、年金受給が始まって9年生きればトントン、それ以上生存するなら追納したほうがお得ということです。

 また、追納した国民年金保険料は、「社会保険料控除」の対象になります。年末調整で会社に納付した証明書を提出すると、税金が安くなるというメリットもありますよ。

 年金を受け取れる年齢は65歳からですから、9年足して「74歳以上自分は長生きする」と思えば、追納したほうが老後の安心を増やせます。参考までにお伝えすると、女性の65歳時の平均余命は89歳です。

年金をもらえる年齢は上がらないの?

 最後にもう一つ、年金でよくある疑問が「私たちが年金をもらう時代には、70歳ぐらいからの受け取りになるんじゃないの?」というものです。

 海外では、67歳や68歳などが年金受取開始年齢になってきていますから、日本も65歳よりも後になる可能性は高いと私は思います。ただ、その制度変更は急に決まるわけではありません。

 現在、会社員が加入している厚生年金の受取開始年齢を60歳から65歳に変更している途中ですが、その変更のために、日本では「20年」という長い年月をかけてきました。それをふまえて考えると、「来年から変更します」という事態にはなりそうにありません。

 まずは、今できることから対応していきましょう。それが、老後の安心をつくるコツですよ。

文/前野彩 写真/PIXTA

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