最初にお伝えした通り、「災害減免法による所得税の軽減免除」と「雑損控除」は、どちらかの選択です。ただし、これは所得税のルール。住民税には、「災害減免法による所得税の軽減免除」のサポートがありません。そこで、所得税で「災害減免法による所得税の軽減免除」を選んだ場合でも、住民税だけ「雑損控除」の申告をすることができるのです。

 そのため、今回の例では、所得税で「災害減免法による所得税の軽減免除」の適用を受けると8万5000円全額が免除され、さらに住民税において「雑損控除」の申告をすると、83万4000円×10%=8万3400円の減額となり、合計で約16万8400円の税額が軽減できます。

 一方、所得税も住民税も「雑損控除」を選んで申告すると、合計で約12万5100円分の軽減となるため、このケースでは、「災害減免法による所得税の軽減免除」を利用したほうが有利なのです。

「災害減免法による所得税の軽減免除」か「雑損控除」を使うか。より有利になるほうを選択して、税負担を減らしましょう (C)PIXTA
「災害減免法による所得税の軽減免除」か「雑損控除」を使うか。より有利になるほうを選択して、税負担を減らしましょう (C)PIXTA

 なお、「災害減免法による所得税の軽減免除」の適用はその年分だけですが、「雑損控除」は損失額が大きくてその年で引き切れなかった金額については翌年以後3年間繰り越して差し引くことができます。

 これらの制度についてどちらが有利になるかは、所得や被害の状況、自治体ごとの独自の対応などで一人ひとり異なってきます。自然災害が発生しないことが1番ですが、もしも被災してしまったときは、ぜひお住まいの税務署や市役所に確認して、自分に有利なほうを選択するようにしてくださいね。

 次回は、災害に対する備えとして、「火災保険」についてお伝えします。

文/前野彩 監修/備順子税理士 写真/PIXTA