退職金には税金がかかるが、申告書提出で優遇
退職金は、税金がかかる対象となり、給与収入とは分けて、退職金収入だけで税金を計算します。また、給料のように毎年受け取る収入ではないため、税金の優遇制度があります。この優遇制度を使うのに必要なのが「退職所得の受給に関する申告書」です。
実は、この申告書を提出しないと、退職金の約20%の税金が、自動的に天引きされ(源泉徴収)、手取りは少なくなってしまいます。
退職までに会社に「退職所得の受給に関する申告書」を提出すると、退職金の必要経費となる「退職所得控除額」を差し引いた上で税金を計算します。その結果、退職金に税金がかからないケースが多くなるのです。
退職金による収入は「退職所得」という分類になり、退職所得は次のように計算します。
「(退職金収入―退職所得控除額)×1/2=退職所得」
退職金収入よりも、差し引かれる退職所得控除額が多ければ、退職金には税金がかかりません。退職所得控除額は、次の表の計算式で求めます。
勤続年数(=A) | 退職所得控除額 |
20年以下の場合 | 40万円×A (最低控除額80万円) |
20年超の場合 | 800万円+70万円×(A-20年) |
勤続年数は、入社から退職までの期間を表しますが、端数は1年に繰り上げます。仮に、3年2カ月で退職したとしても、退職所得控除額を計算する際は「4年」として計算するのです。
勤続年数2年までならば80万円、5年なら200万円、10年なら400万円、20年なら800万円、40年なら2200万円が退職所得控除額となり、この金額を超えない退職金なら税金はかかりません。
例えば、勤続5年、退職金60万円を受け取る場合。「退職所得の受給に関する申告書」を出していないと、退職金収入の60万円に対して、約20%の12万円の税金が天引き(源泉徴収)されます。
ここで、「退職所得の受給に関する申告書」の出番です。
勤続5年の場合は退職所得控除額が200万円あるため、申告書を会社に出せば、退職金収入60万円よりも、退職所得控除額200万円のほうが大きいため、退職所得は0円となり、税金がかからなくなるのです。申告書を提出し忘れて、税金が天引きされている場合は、確定申告をすれば正しい税金を計算することはできますが、「確定申告をする」手間がかかります。
退職金を受け取る場合は、「退職所得の受給に関する申告書」を提出しておきましょう。