「会社独自の福利厚生」を確認する

 新入社員にとっては、4~5月は研修で忙しい時期だと思いますが、先輩として働く皆さんもそんな時期があったことでしょう。その入社時研修等で、会社の福利厚生について聞いたことはありませんか。「もう忘れてしまった」という人もいるかもしれませんが、「実は、自社の福利厚生についてよく知らない」という人も少なくないようです。

 特に、大企業の場合は、国が定めた社会保険に上乗せして、独自の福利厚生サービスがある会社が多いので、この時期、「会社の福利厚生ってどんなのがあるのかな」「減ってないかな、増えたかな」と確認する習慣を付けましょう。

 会社独自の福利厚生サービスは、大きく三つあり、「死亡」「医療」「生活」に分けられます。

独自の福利厚生サービスは「死亡」「医療」「生活」

 まずは、一つ目の死亡に関する給付です。

 会社員は、誰もが厚生年金に加入するため、もしものときには、遺族の状況に応じて、遺族年金が出る可能性があります。この給付に加えて、会社独自の福利厚生サービスがある会社もあるのです。

 例えば、「在職中に死亡したら退職金とは別に、2000万円を遺族に支払う」や「配偶者と子どもの数に応じて、1人200万円ずつ支払う」、というように、一時金タイプで従業員の遺族に手厚い会社もあります。

 また、「扶養に入っている配偶者がいる場合は、3年間60万円/年、子どもがいる場合は、高校卒業まで月額3万円、第2子以降は2万円/加算」や、「子どもがいる場合は、乳幼児は25万円/年、小学校30万円/年、中学校35万円/年、高校50万円/年、大学60万円/年」というように、主に子どもの養育費として、毎月あるいは毎年に給付を行う会社もあります。

 二つ目が医療に関する給付です。

 1カ月の医療費が高額になった場合、私たちは健康保険に加入しているので、高額療養費制度を使うことができます。これにより、医療費の自己負担が、一般的な女性の給料であれば、約6万円から10万円で収まるわけですが、健康保険組合によっては独自の付加給付があるところもあるのです。

 例えば、「医療費の自己負担は、最大2万5000円」、「本人の医療費の自己負担は2万5000円だが、家族は3万円」というように、健康保険組合独自の手厚い給付があるところが多くあります。

 また、高額療養費の付加給付ほど多くありませんが、健康保険組合等の中には、長期間働けず、十分な給料が会社から受け取れない場合に健康保険から受け取る「傷病手当金」についても上乗せをしてくれる企業もあります。

 死亡や医療に関する給付は、私たちが給料から加入する生命保険や医療保険の必要性にも関わってくるものなので、必ず確認しておきたいですね(入り過ぎの民間保険や共済があれば、見直しておきましょう)。

何かのきっかけがないと忙しくて調べないもの。この記事をきっかけに確認を! (C)PIXTA
何かのきっかけがないと忙しくて調べないもの。この記事をきっかけに確認を! (C)PIXTA

 三つ目の生活に関する給付は、国からはありません。これこそ、会社独自の給付です。

 生活に関する給付というと硬い表現ですが、例えば、保養所や提携ホテルなどが安く利用できたり、資格を取得するときに社内で低価格で受講できたり補助金が出たり、インフルエンザの予防接種や人間ドックなどの補助が出たり……と、聞いたことがありませんか。

 これらの給付は、ずっとその会社にいると「あって当たり前」になっているかもしれませんが、実は、会社が社員のために、独自で行っている給付なのです。

 ただし、三つお伝えしたいずれの福利厚生も、最近はない会社も多く、手厚かった会社もサービスを縮小したり、廃止したりすることも少なくありません。これらの福利厚生は、4月を境に変更することが多いため、「新入社員の姿を見たら確認する」という習慣をつくってみてもいいですね。この時期、社内に独自の福利厚生の制度があれば、新入社員研修用にまとめた、分かりやすい資料をそのままもらえるかもしれませんよ。

文/前野彩 写真/PIXTA