ポップコーンは好きじゃなかった

 納得できるようになったのは、お店がオープンして半年ぐらいたったころでしょうか。交渉の経験を重ねて理解できるようになった部分もありますし、ブランドとしてどうあるべきかという考え方のベースがわかってきたことも大きいです。取引先から「ヒルバレーっていいね」と言ってもらえるのが、普通は力を入れないけれど、そこまでやっちゃうの? という点であることがすごく多く、それこそが一番の強みだと考えられるようになりました

 大きな達成感を味わったのは、中目黒に1号店がオープンしたときです。ポップコーンを日本の人たちの生活の一部に入り込むものにしたいという思いから、路地を入った住宅地の中にある個人の一軒家だった建物を選び、長い時間をかけて準備を進めました。改装工事中から興味を持っていた近所の方々が開店後にまずは買いに来てくださったのですが、みなさん「これ、ポップコーンじゃないね」と言って驚くんです。

ヒルバレー 中目黒本店。住宅街に溶け込んでいます
ヒルバレー 中目黒本店。住宅街に溶け込んでいます

 私たちの願いは、従来のポップコーンとは違う「グルメポップコーン」という新しいスナックを日本中に知ってもらいたいということ。私自身は元々ポップコーンが好きではなかったのですが、商品開発をしていく中で、うちの味は食べたらまた食べたくなると身をもって感じていました。

 店頭に立ってお客様に試食を勧めると、思い描いていた通りの反応が返ってきたことに感動しました。やがてヒルバレーが全国的なブームになり、名前を知ってくださる方が増えたときは、自分がやってきたことがこんなに大きい形になるんだということを実感して何とも言えない感情が沸き上がりました。

店内には大澤さんが手がけたパッケージの数々が並ぶ
店内には大澤さんが手がけたパッケージの数々が並ぶ

留学以降、性格も変わった?

 アメリカ留学を境に進む道が大きく変わり、性格も以前よりマイペースになりました。以前はやりたくないことを我慢してやる感じでしたが、今は仕方なくという受け身な考え方ではなく、一つ一つのことに意味を見出して、前向きに行動できるようになった気がします。

 思うのは、何でもまずはがむしゃらにやっていくことが大事なんじゃないかなということ。その中で楽しいと思えることが少しでも見つかれば、そこを引き出して、新たな分野に進んでいければいいんですよね。