「もう一度留学したい」という思いが自分を動かした

 そのときは4カ月で帰国しましたが、別のところにも留学したいという気持ちが芽生え、1年間派遣で働いて留学費用を貯めて、今度はカナダのビジネススクールへ。一度は気持ちにふたをしていたやりたいことに少しずつ向かっていければと、セールスマーケティングを勉強しました。

 1年後に帰国してヒルバレーの立ち上げに関わることになりますが、準備期間はすべてが大変でした(笑)。うちのポップコーンは油を使わず、空気だけでトウモロコシを破裂させる「エアーポッピング」という方法で作られるもので、機械もセミオーダー。原料にカルピス社のバターを使っていることも大きな特長で、それによってバター臭さが後に残らない、繊細な味わいが生まれています。通常のバターに比べて原価も非常に高いのですが、カルピス社に出向いて「こういう商品を作りたいのでぜひ使いたい」と価格面も含めて交渉しました。

オープンから今日まで、忙しくて大変な日々。でも、話をする大澤さんはとても楽しそう
オープンから今日まで、忙しくて大変な日々。でも、話をする大澤さんはとても楽しそう
仕事アイテムの一つ、ヘアゴムと髪留め。「ヘアゴムが2本あれば、仕事用の髪型ができあがるんです。とっても楽なんですよ(笑)」
仕事アイテムの一つ、ヘアゴムと髪留め。「ヘアゴムが2本あれば、仕事用の髪型ができあがるんです。とっても楽なんですよ(笑)」

ブランドはゼロからのものづくり

 仕事をする上で大切にしているのは、まず相手の話をしっかり聞くことです。私は話すのはあまり得意ではなく、交渉ごともそこまでがつがつ進めるタイプではありません。それよりも、自分が興味をもって話を聞いているということを、相手にきちんと伝えられるようにと心がけています。

 取引先の方からは「一生懸命やりすぎているから手伝いたくなる」と言われることが多いです。ブランドを立ち上げるというのは形のないものをゼロからつくっていくことなので、企業にとってはその後ちゃんと売り上げになっていくかどうかも分かりません。それを、無理を言って、しかも小ロットから作っていく協力をお願いするわけです。普通だったら断られても当然なところを、必死でやっている思いが伝わったことで「お手伝いしますよ」と言ってもらえた。そんな方々と今もお付き合いが続いています。

 その一方で、サービス業をしていたときの仕事に対する考え方が変えられず、悩んだ時期もありました。

文/谷口絵美 写真/品田裕美

大澤亜希(おおさわ・あき)

日本ポップコーン(HillValley)ゼネラルマネージャー。大学卒業後、ホテル小田急に入社。ハイアットリージェンシー東京にてフレンチレストランの立ち上げに関わる。その後、アメリカ・サンフランシスコへ語学留学。カナダ・バンクーバーのビジネススクールでセールスマーケティングを学んだのち、現在の日本ポップコーン株式会社の前身となるファレンハイトセルシウスに入社。グルメポップコーンブランド「ヒルバレー」の立ち上げを行う。商品開発、店舗開発、店舗運営、営業などを経験。現在はマーケティング担当として活動中。

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