「間違っていると思ったら、勇気を出して声をあげなきゃ!」
プレス発表会の前に関連部署の担当者が集まって打ち合わせをしたのですが、伝えるべきメッセージが明確になっているのか、若干の不安を覚えました。でも、担当者は「大丈夫」と言っているし、その部門の考えがあるのだろうと、言葉を飲み込んでしまったんです。私自身、初めて関わるBtoB向け事業のため、把握しきれていない部分も多かった。おまけに、相手は年上の方で役職も上だったため、意見するのを躊躇ってしまいました。
しかし、不安は的中。プレス発表会での反応はいまひとつで、メディアに上がった記事もこちらの意図が伝わりきれていませんでした。ひどく後悔しましたね……。
いくら相手が偉い人だろうと、今回のイベントを仕切るプロフェッショナルは私。事業部門の考えも踏まえつつ、提案できることもあったはずです。「もっとここを変えませんか?」「ここまで情報を出せばメディアに興味を持ってもらえますよ」と交渉しなくてはいけなかったのに、踏み込めなかったし、踏み込もうとしなかった。自己嫌悪に陥り、落ち込みました。
その日の夜は、部屋にこもって大好きな映画のワンシーンをずっとリピートしていました。ごく普通の女の子が自分のキャリアと向き合い、問題にぶつかりながら解決していくといったストーリーなのですが、自信を無くしたときには、いつもこの映画を見て勇気をもらいます。特に好きなのがラストシーン。彼女が議会で議員たちに向かって「間違っていると思うなら、黙っていないで声をあげなきゃ!」と、勇気を振り絞ってスピーチする場面があるのですが、それは、まさしくその時の私の心情そのものでした。
自分だけの処方箋を持っておく
たとえぶつかっても、嫌われても、怯まず伝えなくてはいけない場面がある。言わなかったら前に進まないし、あとから凄く後悔するということを、身をもって学びました。
他にも、「泣きたいときにはローマの休日の最後のお別れのシーンを見る」「癒されたいときには美女と野獣のダンスシーンを延々流す」というように、その時々の感情に応じた自分好みのシーンを、処方箋のようにストックしています。そのせいか、ひどく落ち込んだりすることはあまりありませんね。モチベーションのコントロールに役立っているのかもしれません。
最近は、新しいことにどんどんチャレンジしているんです。これまで興味のなかったアーティストのライブに行ってみたり、新しい友達と遠出をして美術館を訪れたり。年齢を重ねることで思考が凝り固まってしまうのが嫌なので、意識的に“初体験”を増やして自分の世界を広げたい。自分の好きなものに囲まれる生活は安心感があるけれど、それだけだと、新しいものに触れる機会をなくしてしまいます。開発部門で「変化の風」を巻き起こそうとしていた1年目のように、今、自分のなかで新たな「風」を起こしている最中です。
文/西尾英子 写真/品田裕美
東京都出身。大学で応用化学を学び、新卒でスリーエム ジャパンに入社。家庭向け医療用品『ネクスケア』の開発に携わった後、クリーニング製品『スコッチ・ブライト』ブランドのマーケティング担当に。2013年1月、社内公募制度を利用し、コーポレートコミュニケーション部に異動。開発やマーケティング部門の経験を生かし、幅広い製品群をPRする。
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