開発とマーケティング部で「技術力」や「売り方」を学んだ鵜飼さんは、今度は自らの手で商品の良さをお客さんに「伝える」仕事がしたいと考え、広報への転身を決意します。広報担当者で開発部門の出身は彼女だけ。「自分だからできること」を追い続けた鵜飼さんの仕事術に迫ります。

必ず「ひとりリハーサル」を行う

 広報に転身したのは2013年の1月。マーケティング部に異動した時と同様、社内公募制度に手を上げ、採用されました。最初の年は、私がマーケティング部で開発した『スコッチ・ブライト バスシャイン』製品(風呂用クリーニング製品)のPRに携わることに。実際に、おそうじの専門家に使ってもらい、そのコメントが記事となり大きな反響を得ることができました。

 広報の仕事は、「ストーリー作り」が重要だと思っています。単に、製品の性能などを紹介するだけではつまらないし、印象に残りません。それよりも、“なぜこの商品ができたのか”“どういった技術が使われているのか”といった背景や物語を伝え、理解を深めてもらうことで人々の心に届く。そのためのストーリー作りには、いつも頭を悩ませます。

 難しい技術を分かりやすく伝えるにはどうすればいいか。どんな言葉を使って、どういった順序で話せば興味を持ってもらえるだろう――。時間をかけて準備を重ね、発表会やイベントの前には「ひとりリハーサル」をして何度もシナリオを練り直します。通しでリハーサルをすると、最初と最後で話の軸がぶれていないか、気づきやすいんですね。

体験型のイベントで商品を楽しくPR

 立ち上げから携わっているブロガー向けイベントで台所用スポンジを紹介した時は、商品にインパクトを持たせるために趣向を凝らしました。

 スポンジには、焦げまで落ちるハードなタイプと泡立ちが豊かで傷をつけないソフトなタイプまであり、この時は3種類取り上げました。説明はハードタイプから行い、逆にデモンストレーションではソフトタイプから実践したんです。

 製品の違いは、説明されるより実感してもらうのが一番です。ソフトタイプの泡立ちの良さを実際に試してもらった後に、ひどく焦げついたフライパンで同じように洗ってもらう。「このスポンジは泡立ちがよくて洗いやすいけれど、ひどい焦げは落としにくい。だからハードなタイプも必要」と実感してもらうことが目的です。3種類のスポンジを使って、いろんなシチュエーションで試してもらうことで、「それぞれの用途に合わせて使い分けるのがベスト」というメッセージを伝えました。

 デモンストレーションでは、こうした「わぁすごい!」という実感と、その驚きを実現させている技術について、両面から楽しんでいただくことを意識しています。

イベントに関わる社内資料はすみずみまでチェック

 プレス発表会を成功に導くのも、広報の重大なミッションです。記者の目線で発表内容が分かりやすくなっているか確認するために、関連部署には発表する資料を事前に提出してもらって、すみずみまで目を通すようにしています。他部署の人たちと連携しつつ、リーダーシップをとることが大事。でも、まだ経験が浅い時期には、それができずに失敗し、悔しい思いをしたことも……。