シーズンごとに異なるカラー展開、あえて機能を絞り込んだ製品など、業界の常識にとらわれない個性的な商品を次々と開発してきた中澤さん。お客様が「つい手に取ってしまう」商品のアイデアはどうやって生まれているのでしょうか? ニーズを掴む秘訣、そして中澤さんが考えるモノづくりの基本を伺いました。

本当に欲しいモノは、お客様に聞いても出てこない

 消費者アンケートはしないと決めています。「どんな携帯電話がほしいですか?」と聞いても、理想の商品は絶対に出てきません。カラーにしても、出てくるのは無難な黒、白、ピンクくらいではないでしょうか。UPQが展開している「blue×green」「navy & red」のようなカラーは、アンケートからは出ないです。お客様が本当に欲しいものは、まだ頭の中にない商品。だから、意見をもとに商品を作ったとしても、心から「欲しい!」とはならないんですね。

 この考え方は、カシオ時代の最初の上司に教わりました。お客様は欲しい商品を言ってはくれない。だから「潜在ニーズを見つけなさい」と、口を酸っぱくして言われました。「どんな携帯電話が欲しいですか?」と聞くのではなくて、「こんな携帯電話ができました」と商品を見せて、「これは喉から手が出るほど欲しい!」と言ってもらえるものを作れ、と。

 そんな携帯電話は、アンケートからは作れません。お客様の潜在ニーズを“読み取って”いなければ作ることができないんです。その隠れたニーズを見つけ出すのが商品企画の仕事だ、と言われた時は、「なんて難しいんだろう…」と愕然としました。同時に、「面白そう!」とも。今も、商品のアイデアを練るときは「これなら欲しい!」と言ってもらえるだろうか、と考えています。

ヒントは観察から見つかる

 ニーズを読み取るには、とにかく観察することです。ターゲットとなる層の生活スタイルや、興味関心を見つめて、そこからヒントを見つけるしかありません。

 カフェのメニューも、そうして試行錯誤しながら作り上げてきました。例えば、オープン当初は、生クリームやフルーツをパンケーキの横に添えていました。苦手なものがあれば避けられるように、という意図だったのですが、今ではすべて乗せて提供しています。お客様を見ていて気づいたのですが、パンケーキの写真を撮る時は上からではなく、皆さん横からなんですね。パンケーキは「高さ」がポイントなんだと気づきました。それ以来、パンケーキタワーを作ってみるなど、高さを重視したメニュー開発をしています。最近は切った断面を撮る人が多いので、真ん中に面白い具を入れてみました。そうしたニーズが見えるのも、現場に立ってお客様を観察しているからです。