早く仕事を進めれば、目に見えて商品が良くなっていく

 ここまで「最短」にこだわるのは、カシオに勤めていた頃の経験が影響しています。私は携帯電話部門としては10数年ぶりに入社した文系の新卒社員だったので、同期や先輩といえる人が周りにいませんでした。比べる人がいないので、周りも私自身もどう評価して良いのかわからない。そこで、わからないなりにも「常に自分の最善を尽くそう」と決めました。例えば、退社できる時間であっても、少し残業して次工程の人が翌朝確認できるように手持ちの作業を進めておく。すると、翌日作業をする人の待ち時間が減るので、プロジェクト自体が少し早く進みますよね。そうやって、その場その場で自分に出来ることはすべてやっておこう、と考えていました。

 携帯電話は、仕事の結果がわかりやすい製品でした。「少しずつ」が積み重なって開発が予定より早く進めば、その分、搭載する機能を一つ増やすこともできます。自分が頑張れば、より早いスピードで仕事を進めれば、もっともっと良いモノがお客様のもとへ届く。こんなにうれしいことはないと思いました。だから今でも、「常に全力で」と自然に身体が動くんです。

徹底して手待ちの時間を減らす性格

 「2カ月間で24製品を開発」というスピードに注目されることが多いのですが、それもカフェのオープンと同じように「最短」で進めた結果にすぎません。もともとスマートフォンを発表する予定だったので、その生産計画をシミュレーションして、締め切りとして割り出したのが2カ月後だったのです。

 2カ月間には工場の生産期間も含まれていますから、私の待ち時間が発生します。じゃあその待ち時間で別の製品も作れるのでは…と考えていくと、1カ月でできる製品もあれば、数週間でできる製品もありました。そうして増やしていった結果が、17種類24製品だったというわけです。生産期間がある限り、待ち時間は絶対に発生しますが、そこに他の工場とのやり取りを入れるなどして、何もしていない時間を最小限に抑えました。